第31話 新しいフレンド
最近新しいフレンドができた。ショコラのアカウントではなく、俺の個人的なアカウントAmberの方だ。こちらのフレンドは、技術力を高めるために使っているアカウントだ。新しいフレンドのアカウント名はHiroだ。ヒロさんって読むのかな? なんかどことなく本名っぽい。登録してある性別は男性だ。
ちなみに師匠は性別を設定してないから未だに男女どっちかわかってない。本人に性別訊くのも失礼になるかもしれない。設定してないってことは隠したいのかもしれないし、そこにはあえて触れていない。でも、口調があんまり女性っぽい感じがしないんだよな師匠は。社会人やっていれば、一人称が【私】になる男性もいるし、多分師匠の性別は男性だろう。
Hiroさんは、とあるVtuberの動画編集の担当をしているらしい。どのVtuberか名前を明かしてはくれないけれど、動画編集でお金を貰っているってことはプロってことなのかな。やっぱりVtuber名を明かすと守秘義務とかそういうのに抵触してしまうのかもしれない。だとすると、企業勢を相手にしているのかな? と邪推してしまう。
ちなみに、Hiroさんはまだ10代らしい。俺も同じ10代ということで気軽に絡んでいける。
Hiro:Amber君ってゲームとかしたりするの?
Amber:昔は結構やっていたんですけど、今はお金と時間が中々なくてできないんですよね
今月の正確な収益はまだ確定してないけれど、先月分の収益は楽に超えそうだ。主にVtuber関連の方で……だから、来月末にはまたお金が入ってくるから、お金の問題はクリアできそうである。ただ、やはり趣味でゲームする時間は中々取れない。
やってみて思ったけれど、実況でやるゲームと趣味でやるゲームは全然違う。趣味でやる分には、グダグダとプレイできるし、特に視聴者のことを意識する必要はない。ただ、実況で撮影しながらやると、「ここはカットだな。じゃあ黙っておくか」「ここは倍速で処理しよう」「ここら辺で面白い話しておかないと」って言う風な意識をしてしまう。時間も意識してやらないと録画ファイルも膨大なものになってしまうし、そこら辺の事情も考えながらゲームするのって案外しんどい。
Hiro:そうか。一緒にオンゲーやってみたかったな
Amber:来月末にお金が入ってくるから、その時になったらオススメのゲームを教えてください
Hiro:お、いいねえ。それじゃあ今からオススメゲームのリスト作っておくか
Amber:気が早いですよww
やっぱりVtuberの編集をしているだけあって、ゲームには詳しいのだろうか。Vtuberもゲーム実況したりするし。俺もVtuberだけど、ゲーム実況はあんまりアップできてないんだよな。ゲーム実況はお金がかかるものだ。フリゲーでお茶を濁している段階だけど、それにも限界を感じている。やはり強いのは企業の新作ゲーム。発売してからすぐにアップした動画は、再生数が文字通り桁違いなのだ。
再生数が爆上がりすれば、ショコラの知名度があがる。ショコラの知名度があがれば、DL数が増える。そう。これが大事なのだ。再生数と共に増えていく広告収入に目がくらんでいるわけでは、決してない。広告収入が欲しいかどうかと言われたら欲しい! でも、やっぱり3Dモデルの売上が一番欲しいのだ。
最近は目的と手段が逆になってきている気がするので、ここらで1度認識を改めなければならないのだ。
その肝心のショコラのDL数だけど、現在のDL数はなんと……10だ! ついに2桁の大台に突入した。俺の手元に入ってきたお金は累計で30万円! 凄い! ショコラのチャンネル登録者数が7万人突破しただけのことはある。この喜びを誰かと分かち合いたい。けれど、俺がショコラの3Dモデルを販売している。そのことが知られたら、俺のVtuber活動も芋蔓式にバレてしまう。つまり、それを言えるのは俺がショコラだと知っている師匠だけだ。でも、師匠は今は忙しくて話せない。
しかし、10人に販売できたとは言え、そうなるともっと欲深くなってしまうのが人間というものだ。後24人に売れれば利益は100万円を超える。プロでもなんでもない素人が作った3Dモデルで100万の利益を叩きだせれば十分御の字だと思う。
しかし、3Dモデル1体に200~300万円を支払う貴族のような人も世の中にはいるんだよなあ。誰かその人を俺に紹介してくんないかな。300万円あったら、もうVtuberやめても全然遊んで暮らせるのに。誰か300万円のお仕事ください。あ、もちろん18禁以外でお願いします。
まあ、300万円欲しかったら、300万円に見合うだけの技術を身に付けろって話だよな。今の俺では30万円が限界。それが現実。辛い。
そんなこんな絵に餅を描いていると、メッセージが届いた。Hiroさんかな? そう思ってメッセージを開くと……これは師匠からのメッセージだ。
Rize:やっと仕事が落ち着いてきた。どうだ? Amber君。私がいない間にちゃんと腕を磨いていたか?
どうやら、師匠も過酷な労働から解放されつつあるようだ。
Amber:師匠。お疲れ様です。師匠がいない間も、きっちりとCG制作に励んでましたよ
Rize:うん。よろしい。それでは、いつものようにデータを送ってくれ。私がチェックしてあげよう
仕事で疲れているはずなのに、俺の面倒を見てくれる。やっぱり師匠はいい人だ。
俺は師匠にモデリングのデータを渡し、師匠が評定をしてくれている間に、SNSを巡回することにした。
『カミーリア・アンデルセンの収益化審査通りました。応援してくれた眷属のみんなー。あんがとねー』
おお。カミィの収益化通ったんだ。同業者の喜ばしいニュースは見ていて気持ちがいいな。まあ、彼女なら収益化も時間の問題だと思ってたけれど。
『お待たせしました。血塗られたお茶会のMVが来月上旬に配信決定しました。今回はメイドをイメージした楽曲です。MVには、知る人ぞ知るゲストが出るという噂が……?』
もう新作のMVができたのか。いや、もしかしたら、勝手に配信スケジュールだけ決められてケツを叩かれてるだけかもしれない。そうだとしたら、リゼさんも大変だな。
それにしても、知る人ぞ知るゲストって一体誰なんだろう。気になるな。リゼさんの個人アカウントを見てみよう。なにか情報があるかも。
『しばらく失踪します。探さないで下さい』
この投稿を最後に消息が途絶えたようだ。やはり、クリエイターというのは過酷な仕事だ。リゼさんは音楽もやっているし、MV制作もしているし、更に本業でフリーランスでCG制作もしている。その内、過労死するんじゃないかと心配になる。
ん? リゼさんが最新の投稿をしたみたいだ。
『フミカがまた無茶なスケジュールを組みやがった。あのアマ絶対後で殴る』
フミカ……確か。エレキオーシャンのドラム担当の人だっけ? 彼女がスケジュールとか組んでいたのか。他のメンバーのことは詳しく知らないけれど、少なくとも姉さんに任せるよりかは確実に適任だと思う。だって、あの姉さんにマネジメントさせたら確実に組織は崩壊するから。
お、師匠からメッセージが来てる。もう評定が終わったのかな?
Rize:Amber君ごめん。今回は詳しい講評ができそうもない。とりあえず、確実に成長しているってことだけは伝える。この調子でがんばれ
Amber:大丈夫ですよ。師匠。忙しい中、俺に時間を割いてくれてありがとうございます。無理しないでくださいね
Rize:ああ。死なない程度にがんばるつもりだ。心配してくれてありがとう
師匠もリゼさんも大変そうだな。やっぱりクリエイターは過酷で激務なんだな。俺はまだ、自分のペースでやれているからマシな方だと思う。誰かから案件を受けるようになったら、また忙しさも変わってくるのだろうか。でも、お金のことを考えると案件を受けた方が収入面で安定する。その辺のバランスも難しいところだな。
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