君は死なない
普段、他人の言葉を遮ることなど無いのに、ラルファが言い終わる前にフランは反論する。
大勢の命を救う為、いくら人間とは言えマスカであるリュクレーヌの犠牲は仕方ない。と切り捨てるような言い方にフランは更にヒートアップしていた。
リュクレーヌが宥める様に寄り添った。
「フラン」
「リュクレーヌ!いいの?この依頼受けると死んじゃうんだよ!」
「少し落ち着けよ」
「落ち着けるわけない!もう二度とチェスも読書も僕の料理食べる事もできな──」
「フラン!」
今度はリュクレーヌが怒鳴る。まるで、強く叱責するように。
流石にフランもびくりと肩を震わせて、沈黙した。その様子を確認して、リュクレーヌは一つ微笑んで見せた。
「いつも言っているだろ?大丈夫だ。俺は死なない」
「そんな、気休め……」
「気休めなんかじゃない。アドミラさんよ。ファントムの魂を消すことで動きを停止するマスカは乖離済みのマスカだけなんじゃないのか?」
「え?」
「あぁ。恐らくな。マスカはファントムの意思の下動いている。ただ、それは乖離済みのマスカだけだ。乖離前のマスカは自我がある」
「やっぱりな」
今度は安心したように笑う。アドミラも分かっているようだ。
ラルファは「ん?」と状況を理解しようと首を大きく傾げた。だが、分からない。
諦めてリュクレーヌに説明を求める。
「どういう事だ?探偵」
「乖離前のマスカは自我がある。停止するのは自我が無い乖離済みのマスカだけ。勿論、今自我があるマスカは乖離次第自我と主を失い停止するって事だ。今度こそファントムを消せば一ヶ月で平穏が訪れるよ」
ファントムを消すことによって意思を失い、動きを停止するのは乖離するマスカが対象である。
乖離前のマスカについては一ヶ月で乖離をし、乖離した瞬間停止する。ファントムを消し、一ヶ月経てば、全ては終わるのだ。
「そして、自分自身に憑依して乖離しない俺は死なない。大丈夫だよ。フラン」
とどのつまり、リュクレーヌは意思を持ったまま今までと同じように生き続けるという。
しかし、嬉しい情報にも関わらず、フランは俯いたままだった。
「……う」
「フラン?」
「そういう大事な事は先に言ってよ!」
「分かった、分かった。悪かったよ」
確証はある。乖離さえしなければ大丈夫。
隠していたわけでは無いが、怒るフランを宥めながら、何とか依頼を受けることにした。
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