主を失うマスカは
ブラーチはファントムを一時的に封印した際、より強力な封印方法を調べていた。
研究の成果として、方法は見つかった。それ自体は喜ばしい事だ。
「だが、マスカはファントムの意思によって動いている兵器だ」
「ファントムの魂がある限りマスカは動き続ける。するとファントムはマスカに封印を解かせるだろうな」
「事実。その方法で彼は復活している。同じことの繰り返しになるだろう」
「なるほど。ファントムの魂が無くならない限りはいたちごっこって事か」
ファントムの魂を封印したところで、ファントムの魂が存在している限り、マスカは生き続ける。
そのマスカがファントムの意思によって封印を解くために、人間を襲うだろう。つまり、封印は気休めでしかないという事だ。
しかし、その理屈には一つだけ希望がある。リュクレーヌは目を輝かせた。
「逆に考えれば、ファントムの魂さえ消すことが出来れば万事解決って訳だ!」
「でも、ファントムの魂を完全に消す方法なんてあるの?」
「それは、分からない。ブラーチにも調べてもらったが手掛かりが何一つない」
アドミラがきっぱりと言う。流石にファントムを消す方法などという都合の良い方法の存在は不明であった。
「そこで君たちに最後の依頼だ。ファントムの魂を完全に消し、すべてのマスカを停止してくれ」
依頼が言い渡される。
最後の大仕事にリュクレーヌは今にもサムズアップをして任せろと言った様子でやる気に満ちていた。
「あぁ、分かったよ。まずは奴の魂を消す方法を調べ……」
「ちょっと待ってよ!」
リュクレーヌの言葉を遮ってフランが叫ぶ。その表情は酷く歪み、見ただけで拒絶を意味する事が分かった。
「どうした、フラン」
「全てのマスカって事は……リュクレーヌはどうなっちゃうんですか!」
「……」
アドミラは沈黙する。
フランの言い分はこうだ。ファントム封印によって全てのマスカが停止してしまう。
世界の脅威となる殺戮兵器が全停止するのであればそれは人類の勝利を意味するのだろう。
しかし、人間の為に、マスカの正体を見破り、ファントムの協力者を探ったリュクレーヌもマスカである。
この功労者も意思を失い停止する。そんな事があってたまるかとフランは訴えた。
ラルファが助け舟をと口を開く。
「フラン……これしか方法はないんだ。それに、このままではマスカがこの世界を支配し、人間は絶滅しかねない。それに──」
「だからって、リュクレーヌが死んでも良いって言うんですか?」
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