恐ろしい教祖
「もしかして、この間この教会にかえってきた青年も……」
「えぇ、勿論。死体はゴーレムにしてあげました。死体はアマラ軍から土葬の依頼で沢山もらっていましたが足りなくなってきたので」
悪びれも無く、柔らかい笑顔で言うミーナに対して、ウェスペルは「ひ……」と声を漏らした。
プルーはやはり殺されてゴーレムにされていた。二人が彼の事を認知しているのだとしたら、教会に戻ってきた時に会話を聞いてしまったのだろう。
聞いてしまったばかりに、彼は命を落とす羽目になったのだ。
「何も心配は要りません。テレーノ教の教徒はみなゴーレムになる事を光栄と思うので」
戒律を違反した者はゴーレムにすればいい。ミーナは言い放つ。ゴーレムとしてマスカと戦い、人間を守るヒーローとして称えられる。
それならば、ゴーレムも悪くは無いだろうというのだ。恐ろしいのは彼女が本気でそう思い、裏の無い声で淡々と語っている事だ。
リュクレーヌも冷や汗を垂らし、フランも青ざめ、身震いした。
「今やこの国は私の物になりつつある……あと少しで、完成するのです。皆が勤勉に正しく生きる、理想郷が。あの人のおかげでね」
爽言い放つと、二人は礼拝堂を後にした。再び二人きりになった礼拝堂で、フランが「もう喋ってもいい?」と問うようにリュクレーヌの肩を叩く。
「あぁ、何だ?」
「ねぇ、良いの?二人共帰っちゃうよ?いつもみたいに「話は聞かせてもらったぜ!」とか言いながら出てくるところじゃないの?」
二人を止め、逮捕するために颯爽と現れ、全ての証拠を突き付け
「いいんだよ。忘れたか?この潜入捜査は証拠を掴むためのもの。証拠さえ手に入ればいいんだ」
リュクレーヌはにやりと笑いながら、カメラと小型の録音装置を見せた。きっとこの中に先ほどの一部始終が収められているのだろう。
「いつの間に……」
「心配しなくてもこの証拠は明日の朝、信者たちの前で伝える。このまま騙されたままじゃまずいからな」
とは言え、善は急げと言ったもので、真実を伝えなければゴーレムにされる犠牲者が増える。
うかうかはしていられない。
「というわけで、帰って写真の現像だ。急ピッチでやるぞ。あぁ、帰るまではそれは着けとけよ。外を歩いている人間が居るだけでも怪しまれそうだ」
ペストマスクを外そうとしたフランに忠告だけをして、道中気を付けながら二人は事務所へと帰った。
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