探偵は嘲笑う

しかし──


「ばっかじゃねぇの?」


リュクレーヌがぴしゃりと言い放つ。

そのことばはまるで、ナイフのように冷たく、鋭いものだった。


「何?」


「お前は何も変わっていない。結局他人に搾取されるだけの人間のままだ」


マリノスが顔を顰めようとも構わずリュクレーヌは続けた。


「マスカはファントムが作り出した人間を殺す兵器。これは今や常識になっている。それでもお前は利用されることを選んだんだ」


「当たり前じゃないですか!私はファントム様のお役に立てるなら命など惜しくない!」


「だから馬鹿だって言ってんだよ。お前は。結局、お偉いさんにこき使われていたときと何も変わらねぇじゃねぇか。心も命も他人に利用されているんだぞ?」


「リュ……リュクレーヌ……!」


ずけずけといった物言いにフランが流石に制止する。

しかし、リュクレーヌの口が閉じられることは無い。


彼は更に挑発するように話続けた。


「結局お前はファントムに良いように利用されただけだ。アイツの事だからきっと今頃ほくそ笑んでいるよ。都合のいい馬鹿なお人形さんが手に入ったってな」


「お前に何が分かる。ファントム様の、何が!」


「分かるさ。アイツとは少しばかり長い付き合いがある……いや、因縁と言うべきかな。少なくともお前よりは分かっているよ」


ファントムが、どういう存在か。

彼が、自分の弟の躰を乗っ取って、何をしているのか、少なくともリュクレーヌには分かっているから──


「アイツがこの地上で最低最悪の悪魔の商人だってな」


断言できる。

彼の行動は悪であると。


「黙れ!!!黙れ!!!!!許さんぞ!ファントム様の事を侮辱するのは!」


「別に……許さなくても結構。俺の意思は変わらな……いっ!?」


逆上したマリノスは、柵ごしに、木槌でリュクレーヌを殴った


「黙れ!その口を壊してもう二度と喋らなくしてやる!」


「はは……いいのか?大事な商品に傷を付けちゃって?」


自虐するように、しかし、煽るような言葉をリュクレーヌは投げかける。

そう、わざと挑発するように。


「お前はただ、金持ちで横暴な奴が憎いだけで、その憎しみだけで大勢の犠牲を払った、ただの大殺人者だ!ファントムに見事に利用されたな。間抜けだよ!自分の意思のない、人に従う事でしか動けないお人形さんが!」


リュクレーヌは挑発を止めない。

まるで何か意図があるように。

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