確認したい事

 

だが、無残にも事件は続く。


次の朝、131号室から死体が見つかる。

シープだ。


一見ベッドで眠っているように見えたが右半身は無くなっていた。


あどけない彼のむごたらしい状態に、現場へと駆けつけたリュクレーヌとフラン、そしてスタッフは顔を顰める。


「あぁ!一体誰なんだこんなに酷い事をするのは!もう許せない!」


流石に温和な性格のポールですら、仲間を何人も無残な形で殺されて怒り心頭のご様子だ。

だが、怒っていても何も始まらない。


「落ち着いてください」


「ふざけんな!落ち着いていられるか!」


リュクレーヌは窘めた。

しかし、逆効果で、火に油を注ぐ形になってしまう。


「大体、貴方達は探偵だというのにずっと事件が起きているじゃないか!役立たず!」


「仕方ないでしょ!僕たちは普通の探偵じゃないんだから!」


横暴な物言いにフランは反論した。すると、リュクレーヌはふっと一つ笑みを見せる。


「そう……この子の言う通り、普通の探偵じゃないんですよね。僕たち」


「何?」


「確かめたいことがあります。全ての死体を見せてください」


唐突な提案に、一同がざわつく。

既にみたはずの死体をどうして再び?と問いかけるように。


だが、普通ではない探偵には、何かしら意図があるのだろう。

ポールが恐る恐る口を開いた。


「死体は全て仮設の霊安室に置いています……」


「では、そこへ案内してください。フラン、お前はどうする?」


「僕は……行くよ!いつまでも死体苦手とか言ってはいられないし……」


「とか言って、一人になるのが怖いだけじゃないのか?」


「もう!からかわないでよ!」


図星だった。

実際にフランは一人で行動するのが大層恐ろしく、例え苦手な死体が安置されている場所であっても、リュクレーヌの行くところならば付いて行かざるを得ない状況だった。


 

「こちらです」


そう言って、案内されたのは客室とはずいぶん離れた最下階の古びたドアの前だった。


黄ばんだドアプレートには茶色い字で「リネン室」と書かれていた。

だが、リネン室にしては不衛生な見た目であり、それに遺体を安置する霊安室に使われている。


恐らく、ここは昔リネン室として使われていて、今は使われていない空き部屋だったのだろう。


「随分と簡素な造りだな」


「何せ、仮設なので」


大勢の人間が集まる豪華客船で殺人事件など早々に起きない。

事件後、霊安室は突発的に作られた。


「まぁいいや。入るぞ。フラン、顔が青いけど大丈夫か」


「だ、大丈夫……ふぅ……」


フランが深く息を吐いて、ようやく覚悟を決めた矢先に、木製の古びたドアが開かれる。

光の入らない暗い空間に、廊下の照明が入り、室内をぼんやりと照らす。

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