ひとまず、一件落着?

「分かった。約束しよう」


アドミラはまっすぐリュクレーヌの方を向いた。


ようやく、信用してリュクレーヌは背中に背負っていたファントムを下ろし、アドミラの元に引き渡した。


「……こいつの事も、任せたぞ」


「あぁ。アマラ軍で責任を持って預かる。……お前の、弟をな」


──あぁ、もう大丈夫だ


リュクレーヌは安堵した。


「……頼んだ」


彼が、ファントムを、ルーナエだと認識したうえで約束をしてくれたのだから。

 

 

ファントムをアドミラへ引き渡し、全てが終わった。


その場で解散となり、リュクレーヌとフランは事務所へと帰宅した。

帰って早々、フランは団服を脱ぎ、私服へと着替えて、ソファに座って伸びをした。


「いやー、ファントムが無事捕まってよかった!」


無事任務を終えた爽快感からか、フランの機嫌はすこぶる良い。


「これでもう、マスカが増える事は無いよね! !リュクレーヌ! !」


ファントムの拘束。


これが意味するのは、新たに契約が出来なくなるという事だ。

そうなれば、新たなマスカが生まれる事はもう無い。

ファントムの存在が公になって一番の懸念事項だった、マスカの大量発生。

その心配はもう無いのである。

とても喜ばしい事だ。


だが、ファントムを捕らえた張本人であるリュクレーヌはデスクで暫く俯いたまま、黙り込んでいた。


「……」


「リュクレーヌ?どうしたの、ぼんやりして」


フランが腰を上げて、リュクレーヌの元へ向かい、顔を覗き込む。

すると、その表情は深刻そうなものから、ぱっと目を見開いて、フランの方へと向いた。


「……!あ、悪い。少し考え事してた」


「そうなんだ」


珍しいなとフランは首を傾げた。


「あ!それよりフラン。アマラの軍服着てないのか?」


フランの姿を見て話題を転換する。

帰宅直後に着ていたモスグリーンの立派な軍服からいつものクリーム色の普段着に変わっていた事を問いかけた。


「うん。もう任務終わったしいいかなって」


「えー、似合っていたのに!」


「いやー、もう着ないよ」


「ん?ガーディアンになるんじゃなかったのか?」


アドミラと交わした約束の事を指摘する。

作戦が成功すれば、フランをガーディアンへと斡旋するという趣旨の約束が二人の間には交わされていたはずだ。


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