司令の目的
アドミラはリュクレーヌの方をぎろりと睨みつける様にして言い放つ。
アマラ軍からの命令。
しかし、司令がわざわざどうしてルーナ探偵事務所に頼みに来るのだろうか。
自軍──ガーディアンに任せればいいのではないかとフランは疑問に思っていた。
「それに、脅迫状はファントム直々に差し出されている」
「なんだと!」
追加で出された情報に一同が仰天した。
だが、リュクレーヌは本当か?と疑うような瞳でアドミラの方を睨みつける。
「信用できないな。アンタの自作自演なんじゃないのか?」
「別に、貴様はこの件を受けなくても構わない」
「何だと?さっきは命令だって言っていたじゃないか」
「私は、そちらの助手にこの件をお願いしたいのだ」
そう言ってアドミラの人差し指はフランの方を指した。フランは目を丸くして「僕!?」と叫んだ。
フランだけではない。これにはリュクレーヌやその場に居た一同が怪訝な表情になる。
「君の銃は、百本ものマスケット銃に変化し戦うことが出来る。それはアマラ軍のひと部隊の戦力に相当する」
「ひと部隊分だと!?」
フランのマスケット銃。彼が「大切な人間を救いたい」と言う望みが小さなスチームパンク銃を百本のマスケット銃へと変化させたものだ。
確かに、乖離済みのマスカ二体を撃破した。これは通常なら、アマラの部隊が撃破するほどの仕事だ。
となれば、フランに依頼をしたくなるのも無理はない。
それだけではない。アドミラは更に、フランに対して言葉をかける。
「もしもファントムを討伐できたのならば、君のガーディアン所属を斡旋しよう」
「おい!勝手に決めるなよ!」
リュクレーヌがアドミラの言葉を遮ろうと止める。
だが、この条件にはフランも難色を示す。ファントムの討伐──すなわち殺す事。それだけは出来ない。
リュクレーヌがまず許さないだろう。躰は双子の弟、ルーナエのものだから。
すると、それに気づいたのかアドミラは条件を変えた。
「あぁ……そうか。ファントムは最悪殺さず、生け捕りでもいい。殺せないのであればな」
「っ……」
「それでは、健闘を祈る」
最後まで冷淡──いや、冷酷に、用件を済ませたアドミラは事務所を後にした。
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