べた褒めミネストローネ

 

事務所に帰って暫くの間、フランは夕飯を作っていた。

リュクレーヌはというと、肉体的にも精神的にもつかれたのかデスクにある皮張りの椅子に座り、半分眠りかけていた。


「はい。今日の晩御飯はミネストローネとパンだよ。好きでしょ?」


赤いスープにプチトマトが形を残した状態で浮く。食欲が無いかもしれないとフランになりに食べやすいものを少しだけ用意した。


「あぁ……久しぶりに食べる気がするな。フランの飯」


「おいしい?」


「……」


リュクレーヌはスープを口に運ぶと俯いてしまった。


「リュクレーヌ?」


フランは心配そうにのぞき込む。


「……誰よりも、人間らしい、か」


「えっ?」


リュクレーヌは聞こえないほどの声で呟くと、勢いよく顔を上げた。


「いやー!嬉しい事言ってくれるな!感動した!」


「んんっ!?」


表情は満面の笑顔だ。心から喜ぶような。


「まさかフランがあんなにアツく語ってくれるとは思わなかったなぁ」


「ちょっ、ちょっとリュクレーヌ!?」


「魂かぁ……そうだよな!俺人間らし」


「あーーー!ちょっと黙ろうか!」


「いだっ!」


止まらない誉め言葉に、フランはリュクレーヌの頭を叩いた。

いきなり、褒め殺しなんて聞いていないぞ!と言う意味を込めて。


「全く……急に何なんだよ」


「いや、改めて嬉しかったなあって」


「こっちは、無実を証明するために、必死だったんだけどね!」


リュクレーヌを民衆に曝したのは彼の無実を周知のものにするためだ。

だが、それが裏目にでて民衆はマスカであるリュクレーヌを怪訝な視線を送ったのだ。


「……でも、あれは本心だから」


「俺が人間らしいっていう?」


照れ隠しをしたものの、フランが言った事は本当であった。

彼がリュクレーヌの事を誰よりも人間らしいマスカだと思っていることは本心だ。

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