ストロベリームーン
ナイトメア
──ここは、何処だろう?
辺りを見渡すが分からない。
深い闇の、奥底の様な漆黒の空間でフランはただ、一人きりだった。
──確か、僕はマスカと戦って、それから
フランはマスカを撃破した。
その後クレアとブラーチが駆けつけた。
記憶は確かだった。
──そうだ、リュクレーヌの身体に機械が埋め込められていたのを見たんだ
その後の事まで鮮明に。
「おい、フラン」
随分と聞きなれた声が名前を呼ぶ。
振り返るとそこには当のリュクレーヌが居た。
「リュクレーヌ?」
だが、おかしい。目の前の彼には負ったはずの怪我が一切ない。
腹に穴が開くほどの重傷だったはずなのに、嘘のように無傷でぴんぴんとしていた。
「もう怪我は大丈夫なの?」
「怪我?何の事だ」
「何の事って……覚えてないの?マスカの攻撃から僕を庇って……」
それどころか、怪我の事すら覚えていない。
「マスカ……」
一体どういう事だ?とフランが訊こうとする前にリュクレーヌが零す様に呟く。
「どうしたの?」
「……離れろ」
突如された命令は自分から離れろという趣旨。
無傷になったリュクレーヌにすら困惑していたフランにはますますよく分からない状況になった。
「え?」
「いいから逃げろ!」
「リュクレーヌ?」
何が起こるのか分からない。
どうしてそのような命令をされたのかも分からない。
だが、脳裏に浮かんでいた「リュクレーヌはマスカである」という仮定から導けば答えは赤子の手をひねるより簡単な事であった。
「うぁ……あ……ああああああっ!!!!」
断末魔の様な絶叫と共に濃い黒の光を放つ。
思わずフランも両腕で顔を覆った。
そして、次に目を開けた時、塵と埃と共に姿を現した機械は、禍々しい人間を模したものだった。
無機質な機械に、輝きを失い濁った目玉がいくつも貼り付けられて、巨大な口からは何重にも重なった舌がちらつく。
まるで、人間の醜い部分を凝縮してどろどろと煮詰めた様な怪物。
「嘘だ……そんな」
乖離だ。
目の前に映る不気味な機械が半年間共に過ごした彼だなんて。
信じられない。いや、信じたくない。
誰か、嘘だと言ってくれ。
夢なら、覚めてくれ──
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