仲介人の目的

「仲介人は、知らなくてマスカにしたってこと?」


「彼女たちの話が本当ならな」


マリーとカレンの話が言うように、同情心だけで彼女たちをマスカにしてしまったのだとしたら、仲介人もある種、被害者だ。


「誰なんだろう。仲介人……」


だとしたら、それは誰なのだろう。

人物名に関する質問は一切答えてもらえなかった。


決定的な証拠の無い中、リュクレーヌは深くため息をついた。


「名乗り出てもらうしかない……か」


「名乗り出る?」


フランのおうむ返しに、リュクレーヌは「あぁ」と返事をして振り返る。


「フラン。全員をこの病室に集めてくれ」


そうして、まるで犯人が分かったかのようにニヤリと笑顔を見せて。

 


病室に関係者全員が集められる。


「関係者は全員揃いましたね」


アマリリス、ダフニー、スコッチ、アメリアそしてラルファ。


この事件にかかわった人物たちだ。

それが一体何を意味するのか、ラルファはリュクレーヌに聞く。


「探偵。犯人が分かったのか?」


「えぇ、犯人は、この中に居ます!」


「!?」


さらりと結論を述べた。

集めるという事はそういう事だろう。


ラルファは更にリュクレーヌに問いただした。


「それは誰だ!」


「その前に!この事件の背景を説明します。どうせ犯人言ったところで証拠を出せって言われるんでしょ?」


「う……」


いつもの事だ。

誰が犯人だと言っても、きっと証拠を求められるに違いない。


それならば最初に事件のあらましを説明した方が良いだろうとリュクレーヌは判断した。

さぁ、答え合わせの始まりだ。リュクレーヌは「まず……」と話を切り出す。


「マリーには双子の姉、カレンが居ます。これは皆さんもうご存知ですね」


これは全員が知っている情報だろう。

リュクレーヌ自身が彼らの前で公表している。


当然その時、アマリリスには地雷だったようで怒り狂ってしまったが。


「マリーは母親の欲求を満たす為だけに私物化され、カレンは家でネグレクト。どうちらも悲惨な境遇に居ました」


「何よっ……」


ずばずばと事実を述べると、アマリリスがリュクレーヌの方を睨みつける。


「事実でしょう?マリーの病気が治れば、また家族四人で暮らせる。二人ともそれを望んだのでしょう」


だが、リュクレーヌは臆しない。

それが紛れもない事実だから。


二人は母親によってつくられた地獄に居た。

そこから脱却して四人で暮らす天国を夢見たのだから。


「双方の願いを叶えるために、仲介人は二人に入れ替わりを持ち掛けたんです」


「犯人……仲介人は何の目的でそんな事をしたんだ!」


ラルファが急かす様に叫ぶ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る