浮気相手は卒倒する
それから一時間ほど経っただろうか。
ようやく、玄関のドアが開く音がする。
リュクレーヌとフランは静かな足取りで、庭から玄関の方へと回った。
オスカーに見送られて、女性がドアから出てきた。
「出てきたね」
「あぁ、そうだな」
オスカーとの逢瀬を終えて、女性は満足そうな顔で家を出ていった。
オスカーは彼女を送る事なく、家の中へと戻る。
「女の人だけだ」
「オスカーさんは自宅だからな」
「そっか」
彼女が帰って行く様子を慎重に付けて行く。
一体、どこの誰なのか。
浮気調査の依頼人の浮気相手だ。
妻が浮気をしていると嘆いていたのに自分自身が浮気をしていたオスカー然り、その浮気相手であるこの女性然り、怪しい。
家から暫くの間後を付ける。
と、フランが辿る道に何かを思い出した。
そう、見覚えがある道なのだ。それも、つい最近。
「ねぇ。リュクレーヌ。この人もしかして……」
リュクレーヌに小声で話かける。
「あぁ、娼婦街の方に向かって行っているな……」
娼婦街。今追う彼女もまた、その方角へと向かっていた。
派手で露出の多い服装に、フランの頭にある仮説が浮かぶ。
「もしかして、この人も娼婦?」
オスカーの浮気相手もまた、娼婦なのではないかと。
「あぁ。その可能性は高い。このまま追って証拠を掴むぞ」
「うん!」
二人は彼女がこのまま娼婦街へと向かうだろう、と尾行を続けた。
だが、暗く、細い路地に差し掛かった時だった。
「あっ!」
バタンと、音を立てて、突如女性は地面へと倒れた。
「倒れた!?」
まずい。理由は分からないが、人が倒れたのだ。
助けなければ。
二人は彼女の元へ駆けつける。
「おい!大丈夫か!」
「起きてください!」
リュクレーヌは女性を抱え、フランは起こそうと必死だ。
だが、彼女は返事どころか、ピクリと反応すらしない。
まるで死体のようだ。
こうしてはいられない。
「くそっ!フラン!俺はブラーチを呼ぶ。お前はラルファさんを呼べ!」
「分かった!」
医者と警察をそれぞれ呼ぶことにした。
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