第21話 同行許可

「私もついて行って、いいですか。」


聞き間違えじゃない。確かに聞こえたその言葉を、俺は脳内で反芻する。


振り返り仮面越しに顔を見るが、適当なことを言ったようにも見えない。


うーん。表情で考えが分かるなんてことできないから、確証はないけれど。


問答無用で斬りかかってきた時、ラノベでいう主人公の踏み台……所謂噛ませ犬タイプの勇者だと思っていたが、違うのかもしれないな。


まあそれは、目覚めた彼女の第一声が謝罪だったことからも伺える。


しかし、どうするか。


勇者を仲間にするメリットは、先を見据えた場合大きい。


だが、相手は同年代の女子だ。今のところ言葉数ことばかずが少ないから何とかなっているが、長期間共に過ごすとなると話は別。


寝る時は? 添い寝を提案するのか? 毎回寝床を2つ探すのも面倒だ。何かの拍子に気まずくなるかもしれない。


食事の時、会話が続かなかったら? やはり気まずくなるかもしれない。


……どうするか。


無言で悩んでいる俺に何かを感じたのか、それともやはり気まずくなったのか、勇者が話しかけてくる。


「……そ、その。……ダメでしょうか。わ、私、役に立てるよう頑張ります!それに、貴方には及ばないですけど、それなりにステータスだって……っ!」


「あぁいや、そうじゃないんだ。」


「……?」


やはり沈黙ではあまり時間も稼げそうにない。大迷宮に篭っていた戦い漬けの3ヶ月間が、俺のコミュニケーション能力にブランクを空けている。


ただでさえ、足りてないのに。


「……まぁ、そこは別にいいんだけどさ。」


「……っ!本当ですか!!」


「え? えっと、そうじゃなくて……。」


ボソッと出た独り言が、肯定の意味として受け取られる。


自分のコミュニケーション能力には期待していない。そういう意味での呟きは、悲しくも彼女に勘違いを与えてしまった。


「……ありがとう、ございます!」


花が咲くような笑顔。これで断ったら、一体どうなってしまうのだろう。


まずいまずいと焦り始め、短時間だが思考の末に思いついたのは。


「……あ、あぁ。これからよろしく。」


もう勘違いではなくしてしまえ。というものだった。






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