第17話 コミュニティ

「あのアナウンスを聞いたか!大迷宮とやらに、我々も乗り込むべきだ!」


「し、しかし!」


とある高等学校にあるコミュニティでは現在、ひとつの会議が始まっていた。


議題となっているのは、つい先日聞こえたワールドアナウンス。大迷宮攻略の報せについてだ。


が聞こえなかったのか!?あれが事実なら、侵入してみる価値は充分にある!」


「いいや!今の世界じゃ、1つの間違いが全員の生死に関わる!それに、戦闘職に就いている人間には、未成年も含まれるんですよ!最低限の生活を維持できている今、変わった行動はやめておくべきです!」


このコミュニティで、迷宮が魔物の巣窟だということを知らない者はいない。


食糧調達班を中心に周辺探索を行ったことと、そういった系統の書籍が好きな中高生が何人かいたからだ。


重要な情報として、全員に共有されている。


そして、攻略賛成派の男が言う”ある一文”とは、ユウマが完全に意識を落としてから流れた、3つ目のワールドアナウンス。


ユウマが聞いていない最後のアナウンスだ。


《【ワールドアナウンス】規定に基づき、右翼迷宮からの魔物氾濫が停止します。》


誰もが息を飲んだ。


そして、迷宮攻略の高すぎる危険性リスクに、天秤にかけても釣り合う利益メリットが誕生した瞬間でもある。


攻略賛成派だって、別にコミュニティの人間が嫌いなわけではない。ただ、現状を変えたい。前例が生まれた以上、可能性に賭けてみたいのだ。


 それでも、反対派の意志は固い。


「とにかく、彼処は危険です!!ただでさえ貴重な戦力を、これ以上消耗させるつもりですか!?」


「……むぅ。だが、例の娘を筆頭に、人間側にもきっと怪物じみた強さを持つ者がいるだろう? そんな者たちが集まれば、攻略だって不可能ではないのではないか!?」


僅かな期待を抱いた声に、反対派のリーダーがきっぱりと首を横に振る。


「……無理ですよ。彼女の隣で戦える強さを、私たちは持っていない。いない者を集めることはできません。我々では、足手纏いになるだけです。」


「……そうか。」


もう元の生活には戻れない。そんな現実が改めて見えたことで、会議室の雰囲気が暗くなる。


「……それでは、とりあえず私たち有森高校コミュニティでの『迷宮』への対応は、静観ということでよろし……ッ!」


「失礼しますッ!」


話を締めようとしたところにバンッ!と力強く扉を開ける音が響く。驚いたことによる静寂に、扉を開けた男の荒い息づかいだけが聞こえる。


「何だ!ノックくらいしろ!」


「す、すみませんっ!」


「いや、そんなことはどうでもいい!……何があったんですか?」


「は、はい……。」


ただ事ではない雰囲気に、先程攻略反対派だった男が声をかける。そしてその返事は、とても信じられるものではなかった。


「ドラゴンが……青白いドラゴンが校庭に、現れましたッ!」





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