第16話 発見。コミュニティ

大迷宮を脱出してから1時間。小さな気配も見逃さないよう慎重に歩いていると、やけに人が固まっている場所を見つけた。


「100人くらいか? 何でこんなに……って、そっか。世界が変わったんだもんな。こんな状況じゃ、1人じゃ厳しいのか。」


気配察知には、オークやアルミラージといった序盤にしてはそこそこ強い魔物が何体も反応している。


この”そこそこ強い”のラインは、少なくとも無職Lv1の時の俺なら余裕で死ぬよね、程度だ。


職業によって初期ステータスに差はあれど、単体で奴らに勝てるレベルとなるとそういない。


きっと彼らの戦術は、チーム戦がメインなのだろう。


「さて、問題は行くかどうか……。」


既に3桁の人数がいるコミュニティ。こんな世界だ。食糧に余裕はないと考えると、歓迎されるとは思えない。


小さな子供の気配もする。満足に食える状況でない今、1人とはいえ成長期の男が来れば、多少生活が圧迫されるのは間違いない。


『精神安定』のスキルがあるので誰かの目を全く気にしないことも可能だが、敵意となれば話は別。もし『害意感知』が反応するような悪意が向けられれば、迷宮内での習慣もあり咄嗟に攻撃を仕掛けてしまうかもしれない。


俺のステータスでそれをやったら、取り返しがつかない事態になる。


「……やめとくか。」


ついさっき魔物の迷宮攻略という最悪の展開がよぎった以上、たとえ受け入れられたとしても定住するわけにはいかない。


関わらないでおこう、と身体の向きを変え、別の方向へと向かう。


つもりだったのだが。


「……ん?」


『気配察知』に反応した、他より若干大きな気配。それなりの速さで進むソレは、真っ直ぐコミュニティに向かっていた。


「魔物か?」


鑑定眼の応用。気配察知と組み合わせて、視認できない生き物への鑑定を可能にする。


◆◆◆

名無し

種族:レッサーワイバーン(MAX)

職業:魔法使い(4/40)


筋力:3540

魔力:2520

体力:2520

耐久:2520


スキル SP:40

『風魔法Lv3』『威圧Lv3』『爪術Lv5』

『物理攻撃耐性Lv2』『魔法攻撃耐性Lv2』

◆◆◆


覗いてみたその時、気配の持ち主『レッサーワイバーン』の様子が変化し、やがて。


◆◆◆

名無し

種族:ワイバーン(1/50)

職業:魔法使い(5/40)


筋力:3640

魔力:2650

体力:2620

耐久:2620


スキル SP:50

『風魔法Lv3』『威嚇Lv3』『爪術Lv5』

『物理攻撃耐性Lv2』『魔法攻撃耐性Lv2』

◆◆◆


「……マジか、進化しやがった。」


今回はステータス上だけだが、それでも魔物の進化を見るのは初めてだ。


鑑定の最中に種族と数値が変動するのは、なんとも言えない気持ち悪さがある。


それとスキルの『威嚇』だが、どうやら使用すると多少相手を怯ませるらしい。使い勝手が良さそうなのでSPで取得しておく。レベルを10にすると『威圧』に進化した。


これで弱い敵に対していちいち戦わなくていい筈だ。思いがけず特したな。


そして本題。ワイバーンだが、あのコミュニティでは流石に倒せないだろう。


立ち向かったとして全滅は避けられない。当然ワイバーンに向かってくることにも気がついていないから、奇襲を受ける形になる。


このままでは、何が起こったのかも分からないまま死にました、みたいな未来も存在し得る。


「助けに行くか。可哀想だし。」


ここは地元だ。基本ソロ活動(ぼっち)だった俺はともかく、妹の中学時代の友達なんかは居てもおかしくない。


あと数十秒で、奴がコミュニティの敷地に降り立つ。急がねば。


「顔バレとか怖いし、防止策でも色々考えながら行こうかな。」










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