第6話 彼女の話

「……ケホッ、ケホッ。……失敗した。」


金色こんじきに輝く長剣を持った少女が、崩落した建物の瓦礫の下からのそのそと這い出る。


腕時計を見ると、先程の「失敗」で壊れてしまったのか停止していた。


が、壊れて間もないのなら、ある程度時間は推測できる。


「……もう2時過ぎ? まずい……寝不足は、お肌の大敵。」


ボーッとしている目をゴシゴシと擦りながら、寝床を探す。


「……ここでいっか。」


ズバッ!と小綺麗な家の扉を長剣で切り裂くと、遠慮なく土足で上がり込む。


「……ベッド発見。」


しばらくの宿にするか、と決めた彼女は早速寝心地を確かめながら、本日の成果を確認する。


◆◆◆

ユイナ・マツオカ

職業:勇者(24/500)


筋力:12000

魔力:12000

体力:12000

耐久:12000


スキル SP:240

『光魔法Lv7』『剣術Lv5』

『聖剣Lv3』『全攻撃耐性Lv1』

『限界突破』『勇者』

◆◆◆


「……ん、悪くない。」


午前中に確認した時に比べ、レベルが2つも上がっている。


『勇者』という特殊性。そしてその必要経験値の膨大さを考慮すると、大健闘と言える。この日は大物を狩ったので、その功績が大きいだろう。


そう満足すると、彼女はある一方に顔を向ける。


その方向には、1つの学校があった。


今でも無事であるならば、そこには100人余りが避難しているコミュニティがある筈だ。


彼女は五日前、そこから食料調達に出ていた人達を魔物から助けていた。そして、一緒に来ないかという"誘い"を断ったのだ。


理由は単純。外に出るようなコミュニティの精鋭揃いであろう彼らは皆、彼女より弱かった。そこに、『勇者』の職業を持つ彼女を守ることのできる人間がいなかったから。


勿論あちらは戦力欲しさで勧誘をしたつもりだろう。入ればきっと、いや間違いなく歓迎される。だが、もし自分より強い敵が現れたら。自分が倒れれば全てが崩れるそこに、安心感は無かった。


「……寝よ。」


 現状、他人を気遣うような余裕はない。


 自らを想うなら、無暗矢鱈に人と関わらないことこそ最善だ。


 そう自分に言い聞かせると、彼女はゆっくりと瞼を閉じる。


 世界が豹変してから、約ひと月後のことだった。





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