第4話 職業変更①

「………はあ、はあ、はあ。」


無我夢中で走っていた俺は、体力の限界が見え始めたところでようやく立ち止まる。


後ろを見る。大丈夫だ。ゴブリンはいない。


身体に傷も無い。あの時新たに取ったスキル『自動回復』のお陰だ。


 文字通り身体を回復するこのスキルの力で、瀕死状態から逃げ切るまでに至った。


「……くそぉ。」


甘く見ていた。ゴブリンなんて、主人公なら何百匹いても変わらないような雑魚だと。


苦戦どころか敗北するなんて、まさに夢にも思わなかった。


俺は、主人公じゃなかった。


「家に帰りたいな……。」


家族は大丈夫だろうか。両親は共働き、妹は部活で遅くまで学校にいる筈だから、自宅の崩落には巻き込まれていないとは思うけど。


仕事場、学校でも同じことが起きていないとは限らない。


しかしそれを確かめる術を、俺は持たない。


「やっぱりここで死ぬのが、1番駄目だ。」


改めて自分を奮い立たせると、やるべきことを思い出す。


「ああそうだそうだ。レベルアップしたんだったな。……忘れてた。」


ゴブリンからの逃走中、足にぶつかったり踏み潰したりしたスライムの量は相当な物だったらしく、現在俺のレベルはカンストしていた。


◆◆◆

ユウマ・オオガサキ

職業:無職(MAX)


筋力:300

魔力:300

体力:300

耐久:300


スキル SP:60

『職業変更』『格闘術Lv1』

『気配察知Lv2』『欲求制御Lv1』

『自動回復Lv6』

◆◆◆



『職業変更』の文字が微量だが光を放っている。


恐る恐るタップしてみると、変更可能な職業欄が表示された。

◆◆◆


【変更可能職業】


『下級剣士』『下級魔術師』


◆◆◆


「こ、これだけ……?」


拍子抜けしてそう呟いてしまったが、直ぐに考え直す。下級という文字を見るに、続きがある筈だからだ。派生職なんかもその候補に入る。


というより、無かったらキツい。


さて、ではどちらにするか。前衛職と後衛職。間違いなくステータスの伸びる項目は違う。


となると今回は『下級剣士』か? 今まで触れたこともない魔術が使えるのかが疑問だし、こちらの方が無難だ。


『下級剣士』に職業を変更し、ステータスを表示する。


◆◆◆

ユウマ・オオガサキ

職業:下級剣士(1/30)


筋力:330

魔力:310

体力:330

耐久:310


スキル SP:70

『職業変更』『格闘術Lv1』

『気配察知Lv2』『欲求制御Lv1』

『自動回復Lv6』

◆◆◆


『剣士』と名にあるので剣術系スキルでも獲得できるのかと思ったが、そんなことはなかった。代わりにSPが10増えているので、それで取れという意味か。


どちらにしろ結局剣なんて持っていない俺には宝の持ち腐れ。剣術系スキルは後回しだ。


ステータスは筋力と体力がそれぞれプラス30。魔力と耐久がプラス10されている。恐らく『下級魔術師』を選んだ場合、増加する数値は逆なのだろう。


魔力はともかく耐久が高い魔術師というのも変だが、そう考えることにした。


取り敢えずレベルがリセットされたのだ。スライム狩りでまた、レベリングするとしよう。

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