#858

空中で対面したジャズとローズ。


彼女たち二人の周囲には、フォクシーレディの能力――抹殺戯言キリングジョークで出現した自律型の機動砲台が取り囲んでいた。


そんな状況の中で、ローズがその口を開く。


「ジャズ·スクワイア中尉……。最後の勧告かんこくだ。ストリング帝国軍の将校しょうこうとして、再び私のもとへ来い」


「お断りしますッ! ローズ将軍こそ、あたしたちに投降してくださいッ!」


ジャズは、腕にまとっていた合成種キメラの力――まるで竜巻のような黒い渦を消して、ローズへ手を差し伸べる。


その態度に、ローズの表情が強張る。


「……その力。まさかお前がグラビティシャドーを取り込むとはな。まったく、帝国を出てからのお前には驚かされてばかりだよ」


「ローズ将軍……。投降をッ! これ以上の戦いは無意味ですッ!」


「それでも、私には引けない理由がある。ここで止めるならば、私は私ではなくなる」


「分からず屋がッ!」


「少々力を手に入れたくらいで、小娘がえるなッ!」


ローズは機械化した腕を――装甲アーマードの拳を振り上げた。


ジャズはしょうがないとばかりに表情を歪め、再び右腕に竜巻のような黒い渦を纏った。


そして、二人の拳が激突。


大気は揺れ、周囲にいた機動砲台がその衝撃で吹き飛ばされていく。


そんな二人の激突を見ていたフォクシーレディは、無数の機動砲台を立て直してジャズへとブラスターを撃ったが――。


「手を出すなフォクシーレディッ! これは私とこの小娘との一騎打ちだッ!」


ローズが声を張りあげる。


だが、フォクシーレディが機動砲台での攻撃を止めることはなかった。


ジャズを撃ち落とそうと、機動砲台を動かして彼女を取りかこむ。


「私の邪魔をするなと言ったろうッ!」


ローズは、ジャズを取り囲んでいた無数の機動砲台へ電撃を放った。


その凄まじい閃光が、機動砲台のほとんどを破壊する。


「ローズ将軍ッ!?」


「優先……私の気持ちを最優先しただけだ。これはお前と私の一騎打ちなのだッ!」


そう叫んだローズは、機械の腕をかざしてジャズへ向かって電撃を放出。


ジャズも左手を翳し返し、重力をぶつけ返す。


重力波と電磁波が激しくぶつかり、ジャズとローズのいる空中――その周囲までもがゆがみ始めていた。


機動砲台を失ったフォクシーレディは、二人の戦闘をあきれながら見上げている。


「チッ、面倒な女ね。せっかくサイドテールちゃんをるチャンスなのに」


「彼女はらせん」


「あぁ……。あなた、まだ生きていたのね。ったく、姉妹そろって面倒臭いおんな~」


フォクシーレディの前には、先ほど機動砲台の集中砲火を浴びたアンが立っていた。


アンは、ジャズが落とした銃剣タイプのインストガンを拾い、フォクシーレディへ突きつける。


「そうだな……。お前の言う通りだ。私とあいつはよく似ている……」

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