#830

ソウルミューの作戦は失敗。


ローズは自ら放った電撃と、彼女を拘束していた電磁波発生装置のショートにより、その身を焦がしながらも何事もなかったかのように向かってくる。


これにはさすがのブレイクたちもひるんでいた。


全身に高圧電流を浴びたというのに、ローズの動きには微塵みじんの問題もないように見えたからだ。


だがしかし、四人ともすぐに気持ちを切り替える。


「さっきのは失敗したが、まだまだヤツを倒すプランは残ってるぜ」


ソウルミューはそう言うと、背負っていた飛行装置――ジェットパックを起動。


上空へと飛び、ブラスターハンドガンを両手に握る。


そんな彼に呼応するように、ブレイク、ブライダル、エンポリ三人もそれぞれ身構えていた。


だが、目の前にいたはずのローズの姿はなく、彼らが周囲へを警戒していると、何かに気が付いたブレイクが叫ぶ。


「上だッ! 気をつけろソウルミューッ!」


ブライダルとエンポリが空を見上げ、ソウルミューもローズの姿を探したが――。


「もう遅い」


跳躍ちょうやくしたローズがすでに彼の頭上から下降してきていた。


ソウルミューは離れようとしたが時すでに遅く、空中でその頭を機械の腕で鷲掴わしづかみにされる。


文字通り獲物を掴んだタカ目タカ科の鳥のように、荒々しく捕らえて離さない。


「お前のジェットパックをもらうぞ。それと、それ以外にも色々便利なものを持っていそうだな」


ローズは力ずくソウルミューの背負っていたジェットパックを奪うと、彼の身体に巻き付いてあったベルトバックを自分の腰に付けた。


マシーナリーウイルスで身体強化された彼女の力の前には、ただの人間であるソウルミューにすべはなく、されるがまま空中で身ぐるみをがされる。


そして、まるで飲み終わったワインのびんでも捨てるように、ローズはソウルミューのことを宙から放り捨てた。


だが離れたことにより、ソウルミューはブラスターハンドガンを発射開始。


落下しながらもローズへブラスターを撃ち続けていたが、それも虚しく彼はただ落ちていく。


「あぁ~、あの高さから落ちたら確実に死んじゃうね」


「んなこといってる場合かよッ! あいつが落ちる前に助けねぇとッ!」


あっけらかんとしているブライダルにブレイクが声を張り上げる。


すると、いつの間にかソウルミューから奪ったジェットパックを使って、ローズが彼らの前に現れていた。


ローズは三人を見下ろしながら言う。


「さて、これから一人ずつ殺すわけだが、その前にお前たちへ最後のチャンスをやろうと思う」


「はいはい、世界の半分がどうとか言う竜王と同じヤツね~。悪いけど、私らはあんたの部下にはならんよ」


ブライダルはすぐにローズの意図を察して答えると、その場で跳躍して上空にいる彼女へと飛び掛かっていった。


「ブー坊君はクソ兄貴をお願いッ! ここは私が引き受けたッ!」


「くッ! わりぃが任せるッ!」


ブライダルに答え、ブレイクが走り出すとエンポリもブライダルに続いてローズへと向かっていった。


向かってくるブライダルとエンポリを見て、ローズはフンッと鼻を鳴らす。


「私と共に来ればいいものを……残念だ」

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