#789

――ブレイクたちが神具の試練を乗り越え、これから出発しようとしている頃。


アンにオルタナティブ·オーダーの者から通信があり、リーダーのライティングからジャズたちのもとへ行くように言われたということ――。


そして、ライティングが組織の者ら全員をこちらへと寄越し、自分は数人の仲間とドローン隊を引き連れ、ストリング帝国の陸上戦艦をを襲撃する話を聞き、メディスンのところへと来ていた。


「なに? 今からライティングたちを止めに行くだと?」


ジャズの提案に、顔を強張らせたメディスンは、傍にいたアンのことをにらみつけた。


余計なことを言ったのだなと、彼女のしたことを非難する眼差まなざしだ。


「別に、ここにあるすべて戦力を投入しようというのではなありません。スクリーミングバードを一機と探索用のドローンを貸してもらえれば、あたし一人で行きます」


スクリーミングバードとは、ヘリコプターのように滑走路なしで垂直に上昇が可能な小型ジェットのことだ。


どうやらジャズは、自分一人でライティングたちを止めに行くつもりのようだった。


「お前が行ってどうする? たった一人でライティングたちを止められると思ってるのか?」


「思ってます」


即座に断言するジャズに、メディスンは右手で頭を抱える。


そんな彼を見て、無表情のアンが「フッ」と噴き出していた。


気が付いたメディスンは、彼女を再び睨みつけるとジャズへ向かって言う。


「よく考えてもみろ。ライティングは自分の部下をすべてこちらに帰順きじゅんさせたんだ。それがどういう意味かわからないお前でもないだろう」


「だからですよメディスンさん。ライティングはもう帝国と戦争するつもりはないんです。ただ、捕まってる仲間……リーディンたちを助けたいだけなんですよ」


ジャズの予想では、ライティングは自分のことをしたってついて来てくれた組織のメンバーを、個人的な理由で戦いに巻き込むのを嫌ってこういう事態になっているのだと、メディスンに説明した。


それなら止められる。


ライティングは帝国を倒したのではなく、仲間を救いたいという理由で武器を取ったのなら、交渉できる。


ジャズはそう考えたのだ。


「それは、たぶんそうだろうが……」


メディスンはジャズの気迫に押されながらも、彼女の目を見つめる。


取り乱したり、感情的になっている様子はない。


理屈で考え、それをあせらずに実行しようとしようと者の目だ。


「私も一緒に行こう」


「アンッ!? お前ッ!」


「メディスンはベクターさんやブラッドと、これから来るオルタナティブ·オーダーの者たちの対応してくれ。なに、彼女は私が必ず守るよ。何も問題ない」


アンがジャズに同行すると言い出すと、メディスンは声を張り上げた。


だがすぐに諦めたのか、ジャズの言い分を聞くことに。


「いいか、ライティングたちを止めるだけだ。彼らはもちろん帝国にもお前たちから手を出すなよ」


「はい、こちらからは絶対に仕掛けません」


不機嫌そうに言うメディスンに、ジャズが笑って返事した。


メディスンはそんな彼女を見て乾いた笑みを浮かべると、次の瞬間にその顔を不安がおおう。


「急いだほうがいいな。通信が来てからかなり時間が経ってる。最悪、すでに陸上戦艦に乗り込んでいるかもしれん……」

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