#778

気が付くと、ソウルミューは薄暗い空間へと戻っていた。


そこには頭のてっぺんから伸ばしたポニーテールと、童顔で小柄なトランジスタグラマーな体型をした少女ブライダルと、杖を持ち、法衣をまとった髪の長い幼女ギブバースが立っていた。


「よう、クソ兄貴。やっと帰って来たね~」


「うっせぇよ、尻尾頭」


ソウルミューは憎まれ口を返すと、二ヒヒと笑っているブライダルとハイタッチを交わした。


そんな二人を見たギブバースは、ブライダルが試練を乗り越えたときと同じように、驚愕している。


「まさか、またも奇跡人スーパーナチュラルでも呪いの儘リメイン カースでもない者が試練を乗り越えたのか……? お主たちは一体何者なのじゃッ!?」


「うん? なんだこのロリっ娘?」


「わしはロリではないッ! それよりもお主たちはなんなのじゃッ!?」


声を張り上げる幼女を一瞥いちべつしたソウルミューは、説明を求めるかのようにブライダルのほうを見る。


それに気が付いたブライダルが、その口角を上げたまま話を始めた。


「あぁ~その人はね。神具を創り出したこの世界の守り神なんだってさ~」


「守り神? またよくわかんねぇのが出てきたなぁ。でも、なんで守り神がロリっ娘の姿をしてんだよ」


「だからその人が言っているようにロリっ娘じゃないっての。喋り方でわかるでしょうが。この人の属性はのじゃロリ、つまりロリババアだよ」


ブライダルとソウルミューがそんな会話をしていると、ギブバースがその身をプルプルと震わせていた。


その姿は、見た目通りの幼い少女そのままだ。


そして、ギブバースは再び同じ疑問を二人へ投げかけた。


どうしてお前たちは奇跡人スーパーナチュラルでも呪いの儘リメイン カースでもない――試練を受ける資格さえないはずなのに、この扉に入ることができるのか。


しかも、どうして何の加護も啓示も無しに、試練を乗り越えることができたのだと、その長い髪を揺らしながら激しくブライダルとソウルミューに訊ねる。


「まあまあ、そんな慌てんなよギブバースちゃんよ」


「“ギブバースちゃん”だと? 子ども扱いするなッ! わしはお主などよりもずっと長く生きておるわ! それよりもわしの問いに答えろッ!」


「そう言われてもな……。世界の守り神様にわかんねぇことをオレに訊かれても……」


右手で頭を掻き出したソウルミューの隣で、ブライダルがポンッと手を打ち鳴らした。


どうやら思い当たることがあったようだ。


「あれだよあれ。ほら前にサルファイドゾーンでバーバリーって奴と戦ったでしょ? そのときになんかダブとクソ兄貴ってシストルムとなんかあったんじゃなかったっけ?」


「あぁ、あれか……。でも、奇跡人スーパーナチュラルになったのはダブだけだったみたいだぜ? オレには加護とか啓示ってヤツは与えられてねぇし」


ブライダルはソウルミューの返答を無視して話し続ける。


「実はさ~。私も前にシストルムに精神攻撃を喰らったことがあってね。加護や啓示とは違うけど、私もクソ兄貴もそれで資格を得たのかな~って」


それを聞いたギブバースは、ハッと我に返ると冷静さを取り戻していた。


落ち着いた彼女はフフフと笑みを浮かべる。


「シストルムか……。意外じゃのぉ。じゃが、それだからこそ試練を乗り越えられたのじゃろうな」


そして、ギブバースはブライダルとソウルミューに背を向けて、どこまでも続く薄暗い空間を眺める。


「あとは、ブレイク·ベルサウンド……クリアの息子、ブー坊だけじゃな……」

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