#665
ライティングにそう言われたが、ジャズはこの場にいるラムズヘッドのことが気になっていた。
ジャズも当然、彼と話をしたかったのだが、どうしても部外者としか思えないラムズヘッドがいることに違和感を覚えていたのだ。
彼女がラムズヘッドのほうへ視線をやると、ライティングが口を開く。
「ああ、ラムズヘッドさんのことは心配ないよ。この人はボクらの味方だからね。ぜひ君の話を聞いてもらいたくて、ここに居てもらっている」
ライティングは、それからまた同じようなことを説明し始めた。
ラムズヘッドのおかげで、ストリング帝国と戦うことができている。
もしこの人の支援してくれなければ、今頃も多くの人間が苦しんでいただろうと。
「これから帝国との戦いはさらに激しくなる。そのため、ジャズが知っていることを、ラムズヘッドさんにも聞いてもらいたいんだよ」
「それは言い過ぎだよ。俺はただ、君やその仲間たち――オルタナティブ·オーダーが世界のために戦っているのを手助けさせてもらっているに過ぎないんだから」
ラムズヘッドはライティングにそんなに褒めないでほしいと
だが事実として、ラムズヘッドがオルタナティブ·オーダーに与えた武器や弾薬、兵器や補給物資がなければ、世界はローズ率いる帝国軍に支配されていただろう。
それはある意味では、帝国の先代――レコーディ·ストリングがやろうとしていたことと同じだった。
ローズは武力によって世界を統一しようとしていたのだ。
ライティングはジャズに訊ねる。
「ジャズ、君はオルタナティブ·オーダーのことはどれくらい知っているのかな?」
「帝国の弾圧を阻止しようとしている組織と聞いてるけど」
「その通りだよ。ちなみにボクも君たちの噂は聞かせてもらっているよ。エレメント·ガーディアンに怯える町を救って回る救世主――あのヴィンテージ、アン·テネシーグレッチの再来だってね」
今から七年前に起きた帝国とバイオニクス共和国の前身組織バイオナンバーの戦争――。
アフタークロエ以前に世界を襲った脅威であった暴走コンピューター。
そのコンピューターが生み出した人型の化け物――
「どの時代でも人は救世主……英雄を求めるものだよね。それが今は君やライティングになったというわけだ」
「ボクはただあなたの支援や仲間たちに支えてもらっているだけだけど。ジャズは本物の英雄ですよ」
ライティングがラムズヘッドの言葉に謙遜しながらジャズを
それからライティングはジャズへお茶を用意すると、彼女に椅子に座るように声をかけた。
「じゃあ、飲みながらでも話を聞かせてよ。あの後、いやこの一年の間で何があったのか」
「そうね……。話したいことはいっぱいある……。もちろん聞きたいことも……」
ジャズはそう言うと、ライティングが出してきた椅子に腰を下ろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます