#663
ライティングがいると聞いた場所は、どこにでもある普通の町だった。
特に壁や囲いはなくそのままの状態で、とてもオルタナティブ·オーダーのような組織が
「そういえば、ウェディングはクリーンと一緒だったみたいだけど。あの子はどこへ行ったの? てっきりあんたたちと居ると思ったのに」
「それは……」
ジャズがブライダルほうへ顔をやると、彼女が答える。
「ウェディングは私と二人で帝国軍の包囲を抜けた後に、なんか一人でどっか行っちゃったよ~」
「えッ!? どこ行ったのよッ!?」
「たぶんだけどあの子、ローズ·テネシーグレッチを狙ってんじゃないかな? ほら、なんかクリーンってローズ将軍に
「それって一人で帝国軍へ乗り込んだってことッ!? ムチャだよそんなのッ!」
ブライダルは、驚きの声をあげるメモライズにヘラヘラと返事をする。
「だよね~。だけどあの子はダイヤモンドだもん。意思の固さはその名の通り」
「たしかダイヤモンドには、“征服されざるもの、何よりも強い”という意味が込められていたな。そういう性分なら、他人の助言など聞けんか……」
サーベイランスがポツリと言う。
その様子は、ウェディングに自分は一生許してもらえないだろうと思っている
それからジープから降りたジャズたちは、メモライズについて行く。
町の中に大人はほとんどおらず、子供ばかりが目に入る。
成人らしき人間を見かけたとしても、二十代くらいの若者ばかりだった。
さらに店などもなく、石や木で造られた住居が並んでいる。
「着いたよ。ここにライティングがいる」
到着したところには、他の住居と同じ家だった。
もはや裕福な国で生まれた者から見れば、小屋と言ってもいいだろう。
とてもじゃないが、軍事組織のリーダーがいる場所にしてはあまりにも頼りない。
「じゃあ、ウチはちょっと仕事あるから」
「えッ? 行っちゃうのメモライズ?」
「大丈夫。ちゃんとあんたたちが来たことは伝えてあるから」
そして、メモライズはジャズを送り届けると、その場から去って行った。
ジャズが笑みを浮かべながら手を振り、ニコもその場でピョンピョン飛んでお別れを体で表現していた。
「さてと、では中へ入るか」
「そうだね。なんか緊張するな……」
ジャズが呟くように言うと、サーベイランスが冷たい声を出す。
「何があっても心を乱すなよ。それが総大将というものだ」
それを聞いたジャズは不機嫌そうな顔をすると、サーベイランスに返事をすることなく住居の扉をノックした。
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