#660
アン·テネシーグレッチと民間人たちのおかげで、ストリング帝国の追撃を逃れたジャズたちは、彼女たちと別れてオルタナティブ·オーダーの迎えを待っていた。
「あ~あ、やっぱサインもらえばよかった」
ブライダルがぶつくさと言っていると、機械人形のサーベイランスが不可解そうに言う。
「そんなもの貰ってどうする? 飾る部屋も無し。今のお前には無用の長物だろう?」
「だってあのアン·テネシーグレッチだよッ!? 私はずっとファンだったんだッ! 前作の主人公に会えるなんて、これは宇宙世紀でいえば、一年戦争の英雄に会えたようなもんなんだよッ!」
「……まあ、半分は理解した」
呆れるサーベイランスの隣では、電気仕掛けの仔羊ニコが大きく首を傾げている。
そのとき、一台のジープが彼女たちのところへ向かってきた。
それを見て、ジャズがブライダルたちに向かって声をかける。
「来たみたいね」
現在ジャズは、ブライダル、サーベイランス、ニコと共にいた。
別れたアンには、ヘルキャットとアリアもついて行っている。
追撃から逃れた後――。
ジャズは、アンにメディスンやアミノがいる場所を伝えた。
アンは、彼らを自分たちがいる場所へ連れて行きたいとジャズへ言い、その場所を聞いて向かうことに。
「ジャズ、君は来ないのか?」
「あたしはこれから……オルタナティブ·オーダーと――ライティングと会おうと思ってます」
ジャズはブライダルがウェディングから受け取った通信用デバイスで、ライティングと会って話がしたいことを伝えた。
それを聞いたブライダルとサーベイランスは、当然彼女について行くと言い、ニコも大きく鳴いて自分も一緒にと言っている。
ヘルキャットとアリアも同行を願ったが、二人が最近までオルタナティブ·オーダーと敵対していた帝国側だったこともあり、ジャズはそれを断る。
「それに、これからやることが増えると思うの。だから、ヘルキャットとアリアには、アンさんやメディスンさんの手伝いをお願いしたい」
ジャズの言葉を聞いた二人は、なくなくアンと共にメディスンたちがいるところへ行くことに決めた。
そして、アンはメディスンたちと合流してから行く場所の地図を、サーベイランスに教えた。
「この回線は帝国側にも盗聴できないはずだ。何かあればすぐに連絡をくれ」
「ああ、オルタナティブ·オーダーとの話し合い次第では、すぐに連絡を入れる」
サーベイランスはアンにそう返事をすると、彼女たちは去って行った。
――その後。
ウェディングから受け取った通信用デバイスでオルタナティブ·オーダーと連絡を取り、待ち合わせに指定された平地に来て、現在に至る。
「ジャズ姉さんは知り合いみたいだけど。そういえば私、ライティングって人と会ったことないんだよね~。サーベイランスとニコはあるの?」
ニコはその豊かな毛を揺らして
そんな電気羊を
「ああ、だが彼は私に良い感情はもっていないだろうな」
「そういえばあんたらって共和国で殺し合ったんだっけ? そういえばウェディングもマジでブチキレれてたもんな~。まあ、私も姉さんを殺そうとしてたから言えたもんじゃないけどさ~。つーか、あんたもヘルキャットさんやアリアさんと一緒に行ったほうが良かったんじゃないの?」
ブライダルがそう言うと、ジャズが向かってくるジープを眺めながら口を開く。
「それじゃ意味がないよ。ヘルキャットとアリアはあくまで刺激しないようにって話だけど。サーベイランスの場合は、後で知られたほうが問題になる」
「そんなもんかね~。私にはわからん感情だ」
ブライダルがあっけらかんと答えると、サーベイランスが呟く。
「ライティングが彼女……ウェディングと違うことを願うしかない……」
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