#635
光剣――ピックアップ·ブレードの青みがかった白銀の刃をジャガーへと向けたローズ。
ジェーシーは彼女の隣で通信デバイスを操作し、帝国兵を呼んでいるようだ。
「おいジャズ。さっさと立てよ」
「え、ジャガー……? どうしてここに……?」
ジャガーは虚ろな目で見上げてきたジャズの頭をポンッと叩くと、ストリング帝国で使用されている警棒――コンデンサー·バトンを手に握る。
そして、もう片方の手には、突撃銃のような外観をしたストリング帝国のインストガンとほぼ同じ性能を持つ拳銃――オフヴォーカーを構えた。
「これから迎えが来るから、お前はこのまま脱出しろ」
「なにを言ってるのジャガー……?」
「いいから早く立てよ」
ジャガーはそう言うと、外観が肉食獣を思わせる銃口をローズへ向けて発射。
電磁波が彼女を襲ったが、ブレードの光の刃で切り落とされた。
ローズはフンッと鼻を鳴らすと、ゆっくりとジャズとジャガーのところへ近づいていく。
「お前一人で私を抑えられるとでも? 随分と舐められたものだ」
「舐めてなんかいないって。オレがあんたに勝てるはずも足止めできるはずもねぇのはわかってる」
「ほう。ではどうやってここから脱出するつもりなのだ? ここは地下、外にはもう兵が集まってきているはずだ」
「そこは知恵と勇気かな。まあ、勇気ってガラじゃねぇけど」
「何か策があると見える。だが、お前にはもう後はないぞ。そして、当然これから先もな」
ローズがピックアップ·ブレードを振る挙げたそのときだった。
突然天井が爆破され、そこから二人の人物が出て来る。
「来たぞッ! 早く私らに捕まれッ!」
「ジャガー君ッ! ジャズちゃんッ! 急いでくださいッ!」
それは、小柄な少女ヘルキャット·シェクターと、先ほどジャズの部屋に来た長身の少女アリア·ブリッツの二人だった。
インストガンで武装した二人の背には、ストリング帝国が開発した飛行装置――ジェットパックがあり、そのまま浮きながらジャズとジャガーのところへと降りてくる。
それを見たジェーシーは、髪を掻きむしりながら通信デバイスに向かって叫んでいた。
ローズのほうは浮かべていた笑みを引っ込めると、ヘルキャットとアリアへ視線をやる。
「ヘルキャット·シェクター、アリア·ブリッツ……。お前たちも私から離れるか……。どうやら私には余程人望がないらしい」
ローズに睨まれたヘルキャットとアリアはその身を震わせたが、二人はすぐに自身を奮い立たせ、ジャズとジャガーの身体をそれぞれ掴んだ。
そして、ジェットパックを起動。
爆破して開けた天井へと飛んでいく。
「そう簡単に逃がすと思うなッ!」
だが、ローズがブレードを持っていないほうの手を翳すと、その腕が機械化――
彼女の腕がバチバチと鳴り始めると、その掌からジャズたちへ電撃が放たれた。
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