#617
その後、ジャズが落ち着くまで待ってからセティの話は始まった。
まず、ジャズの双子の弟であるジャガー·スクワイアや、さらに友人のヘルキャット·シェクターとアリア·ブリッツなども無事にストリング帝国にいるようだ。
「あとローズ将軍の派閥の将校は大体いるな。お前に近い人物でいえば、ノピア·ラッシク将軍のとこにいたスピー·エドワーズ大尉、パシフィカ·マハヤ軍曹などは、未だに行方がわからんが」
「そうですか……」
そしてセティが言うに、帝国は現在世界中の国を鎮圧して回っているようだ。
その理由は、以前に各国を統べていたバイオニクス共和国が無くなったことで、それぞれの国が武器を持って争いを始めたからだった。
「じゃあ、ローズ将軍は各国の脅威を抑えるために?」
「そうだ。そのために私たちもこうして世界中に派遣されている」
ジャズはセティの話を聞いてブライダルとサーベイランスのほうを見た。
どうやら彼女たちが知っていた話とは少し違っていたようで、ブライダルは不可解そうな顔をし、サーベイランスもその身を縮めている。
セティは話を続ける。
次第に争いを収めていった帝国だったが、そこである組織が現れた。
それがライティング率いる組織――オルタナティブ·オーダーだ。
オルタナティブ·オーダーは、帝国軍のノピア·ラッシク派や、さらにバイオニクス共和国にいた者たちが集まって結成されており、中にはハザードクラスであるウェディングのような特殊能力者もいるため、帝国軍も手を焼いていると言う。
「さらにエレクトロハーモニー社が奴らに物資を補給しているようでな。あの会社……帝国にも武器を売っているくせに、オルタナティブ·オーダーにも協力している。まったく困ったものだ」
「あのフォクシーレディの会社ですもんね。
かといって物量で勝る帝国に、オルタナティブ·オーダーが正面から敵うはずもなく、彼らは様々な地域でゲリラ戦を仕掛けているようだ。
ジャズは思う。
ウェディングは、きっとセティ大尉がいるこの駐屯地を狙っていたのだと。
ライティングは何を考えているのだろう。
少なくともセティの話を聞くに、帝国は乱れた世を正そうとするために戦っている。
それなのに、何故彼は反帝国組織を率いて戦火を広げるような真似をしているのか。
自分は一体どうすればいい――。
彼女が考え込んでいると、それに気が付いたセティが声をかける。
「いきなり話をし過ぎたか」
「いえ、そんなことは……」
「どうもお前は、昔から考え過ぎるところがあるからな。お前たち用に休めるところを用意させた。ゆっくり休んでからまた後で話そう」
セティがそう言うと軍幕から出て行った。
ジャズは自分は大丈夫だと彼女に声をかけようとしたが――。
「いやいや、あの女将校さんの言葉に甘えさせてもらおうよ」
「ブライダルの言う通りだな。それに、今聞いた話を私たちだけで整理もしたい」
ブライダルとサーベイランスがそう言ってきた。
ジャズは反対しようとしたが、ニコも心配そうな顔で彼女に鳴いてくる。
そんな仲間たちを見たジャズは、セティの言う通りに用意されたところで休むことにした。
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