番外編 アフター·サービス

――大災害後に、サーベイランスは崩れた建物の中で目覚めた。


彼はミックス、ジャズらにバイオニクス共和国で敗れた後に、サービスの体内にずっといた。


身体は失ったが、ずっと彼女の中でその様子を見ていたのである。


当然永遠なる破滅エターナル ルーインが共和国を襲撃したときも、そしてその戦いもすべてサービスの身体から眺めていた。


そして、その共和国と帝国ら連合軍と永遠なる破滅エターナル ルーインの戦闘中に、イード·レイヴェンスクロフトが集めた神具や奇跡人スーパーナチュラルを使った儀式が行われ、凄まじい大災害とその後にエレメント·ガーディアンと呼ばれるようになる黒い光が現れた。


嵐と豪雨、さらに地震にさらされてそこをエレメント·ガーディアンが、連合軍と永遠なる破滅エターナル ルーイン、敵味方区別なく襲った。


そんな中で、サービスは皆を助けようと、一人エレメント·ガーディアンへと突っ込んでいく。


次々に襲い掛かって来る黒い光に、サービスは自分の心臓ともいうべきルーザーリアクターの力を全開放。


その様子をサービスの体内から見ていたサーベイランスは、彼女へ声をかける。


《止めろサービスッ! それ以上出力を上げると身体が耐えられないぞ!》


サーベイランスはサービスのこと以上に、彼女が破壊されて自分のデータも消滅してしまうことを恐れた。


だが、全身からルーザーリアクターの光――黄金の光を放ち続ける幼女は穏やかに返事をする。


「心配ありがとね……。大丈夫だよサーベイランス……」


サービスが放つ光は、傷ついた連合軍と永遠なる破滅エターナル ルーインの者たちの負った傷を癒し、彼らへと向かっていくエレメント·ガーディアンを消し去っていく。


だが、その光が輝きを増すほどにサービスの身体が崩れていく。


まずはその皮膚のような外観がボロボロと取れて行き、中の機械部分が剥き出しになると、そこからさらに腕や足も失っていく。


《ダメだサービスッ! このままではお前の身体はッ!》


慌てるサーベイランスにサービスは言った。


今なら、生まれてきた――自分のような者が造られた意味が分かる。


自分はこういうときに――人間を護るために造られたのだと。


《違うッ! 違うぞサービスッ! それでお前が壊れたら誰が人間たちを護るんだッ!?》


次第に身体が崩れていく中で、サービスはサーベイランスの呼びかけを聞きながら笑みを浮かべる。


「大丈夫だよぉ……。あなたがいる……。あたしが壊れても……サーベイランス·ゴートが人間たちを護ってくれるから……」


《お前は……私がしたことを忘れたのかッ!?》


サーベイランスは以前に、バイオニクス共和国の科学者が造り出した特殊能力を持つ少年少女を操り、そして彼らを死に追い込んだ。


そのことを知っていて何故そんなことを言えるのだと、サーベイランスはサービスへ言葉を続けていた。


だが、それでもサービスは――。


「たしかにあなたのしたことは許されることじゃない……。だけど……それでもあなたもあたしと同じ……同じなんだよ、サーベイランス……」


《バカなッ!? 私はお前の言うようなことはしないぞッ!》


「サーベイランス……。みんなを……。ミックスお兄ちゃんとジャズお姉ちゃんを信じて……」


《サービスゥゥゥッ!!》


サービスは自分の身体が壊れる寸前に胸部にあったルーザーリアクターを飛ばした。


それは黒い光――エレメント·ガーディアンを消し去りながら雨雲を突き抜けていった。


そしてその後に、玩具のような機械人形の身体に自分のデータが移っていること気が付く。


崩れた建物の中でサーベイランスは思う。


サービスは人間たちを護ってこの世界から消えてしまったのだと。


「バカな奴だ……。自分が壊れてしまったら、なんの意味もないというのに……」


サーベイランスはそうポツリと呟くと、自分の身体を見た。


三本指の機械の手足。


そして、少しの衝撃で壊れてしまいそうな脆い外観を。


「こんな身体となった私が、人間たちを護れるはずがないだろう……」


冷静に自分のできることを考えたサーベイランス。


こんな玩具のような小さな身体では、サービスの願いを叶えられるはずがない。


だが、サーベイランスは思い出す。


あの幼女が言ってくれたこと――。


「私たちは同じか……。そうだな……。お前と私は……人間たちのために造られたのだ」


人々を護るために散っていった幼女を想いながら――。


サーベイランスは三本指の足で歩み始めた。

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