#601
ジャズは部屋を出てから建物の外へ。
出るまでに誰とも会わなかったところから考えるに、どうやら彼女はどこかの空家に運ばれたようだ。
それからブライダルにサーベイランスがいるところを訊き、街の中を歩いていく。
多くの住民たちの姿が見える。
先ほどブライダルから聞いた通り――。
サーベイランスが住民たちに説明をしてくれたのか、特に問題もないようだ。
「あそこだよ。さっきはあそこで皆に説明してた」
ニコを肩車で担ぎながらブライダルはジャズに伝えた。
そこは、パソコンなどのパーツが山のように置いてあったゴミ捨て場だった。
街の中にポツンとあるそのゴミ捨て場を見て、ジャズは何故サーベイランスがこんなところで住民たちに説明をしたのかわからなかった。
「なんでこんなとこで……」
「まあ、行けばわかるって」
ブライダルが肩に乗せたニコを揺らして言った。
揺れて落ちそうになるニコは必死で彼女の髪――頭のてっぺんから伸びているポニーテールを掴んでいた。
まるで壁のようなジャンク品の間を抜け、ジャズたちは奥へと進んでいく。
そして、その奥には小さなロボット――サーベイランスがいた。
「ジャズ·スクワイア……起きたのか」
サーベイランスはジャズたちに気が付くと、やっていた作業を止める。
手に持っていた電子ドライバーを見るに、どうやら自分の身体を修理していたようだ。
おそらくここにあったジャンク品で身体を補修したのだろう。
手足もボディもそれぞれ色が違っていて、ツギハギだらけのような姿だ。
「なんかフランケンシュタインって感じね」
ジャズがそう言うと、サーベイランスは愛想なく返事をする。
「それは間違っているぞ。フランケンシュタインというのはそのツギハギだらけの怪物の名前ではなく、彼を生み出した科学者の名だ。製造者のヴィクター·フランケンシュタインは、造り出した人造人間に名を付けることが無かった。だから、お前の台詞は“フランケンシュタインの怪物って感じね”が正しい」
ジャズはサーベイランスの言い方にムッと目を吊り上げたが、すぐに気持ちを切り替えて訊ねた。
ベットの上でブライダルから聞かされたことを話して欲しいと。
「ああ、そのことか……」
サーベイランスは胡坐の姿勢から立ち上がると、ジャズのことを見上げる。
動作に問題がなさそうなので、もうほぼ身体は完成しているのだろう。
それからサーベイランスはブライダルが話と同じことを言った。
こんな見すぼらしいロボットが街を救ったと聞かされるよりも、勇敢な少女が湖の底から都市を引き上げたと言われたほうが物語として住民たちが受け入れやすいだろうと。
それはもう聞いた――。
そう答えたジャズは、その話を聞いたときにブライダルが言っていた、サーベイランスの考えというのを話して欲しいと言葉を続けた。
すると、サーベイランスは上げていた顔を下げて言う。
「……私の考えは、この乱れた世界でお前を担ぎ上げて世を正すことだ」
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