#540

メゾンマルジェラがそう叫ぶと、彼女の周りに浮いてた光のナイフが一斉にジャズとメイカに襲い掛かる。


「おい、早く下がってよ」


メイカはジャズにそう言うと、前に出て両手を翳して光の障壁を出した。


だがジャズは彼女の言うことは聞かずにジェットパックを起動させ、向かってくる光のナイフを避けながらメゾンマルジェラへと飛んでいく。


空から突進してくるジャズを見て、メゾンマルジェラはクスリと笑う。


そして、路上駐車してあった車をオーラで遠隔操作。


インストガンを撃ちながら向かってくるジャズにぶつけて彼女を建物へと吹き飛ばした。


「あぁ~言わんこっちゃない……」


メイカはあっという間にやられてしまったジャズに呆れると、光を纏った両手の掌を合わせてオーラむちを作り、メゾンマルジェラ目掛けて振るう。


オーラの鞭はメゾンマルジェラの身体を縛り、それからメイカは自分の傍まで彼女を強引に引っ張った。


だが、メゾンマルジェラは引っ張られる前に自分からメイカへと飛んでいき、空中でオーラの鞭を引き千切るとそのまま彼女に手を伸ばす。


メイカは飛んできたメゾンマルジェラと衝突。


その衝撃で二人は宙へと舞ったが、メゾンマルジェラが一手早く、今度はメイカのほうがオーラで身体を拘束されてしまう。


そして、メゾンマルジェラはメイカを建物の壁にめり込ませるように叩きつけると、その死人のような青白い顔を彼女に近づけた。


「ふふ、褒めてあげるわ。たしかにあなたの技術は大したもの。でも、それだけよ」


そう言いながらメゾンマルジェラは、メイカの右目――神具クロノスへと手を伸ばした。


だが、右目に引き抜こうとした瞬間、まるで炎の中に手を入れたかのような火傷を負う。


「何の対策もしていないと思ったわけ? あなたもあの小娘並みに甘いわね」


「ならお前を殺して神具を奪うまでだッ!」


メゾンマルジェラがメイカの心臓を目掛け、オーラで作った光の刃を突き刺そうとした。


だが、それを読んでいたメイカはカウンターで頭突き。


顔面へもろに喰らったメゾンマルジェラだったが、建物にめり込んだメイカを引き抜くと無理矢理にコンクリートの地面に叩きつける。


「くッ!? こうなったらッ!」


メイカは光の枷を外せないでいる。


だが、右目にはめ込まれた神具クロノスを発動。


右目の瞳がまるで時計のように、時針、分針、秒針と一から十二の英数字が刻まれ、何が起きているのかその針が彼女の感情と呼応しているかのように恐ろしい速度で動く。


「マスターズ·タイム……クロノスッ!」


メイカがそう叫んだ瞬間、メゾンマルジェラが気が付くと彼女の光の枷が外れていた。


そして、そのままメゾンマルジェラへ反撃を試みる。


「神具を使ったようね。でも、呪いの儘リメイン カースはその力を使い続けることはできないでしょッ!」


呪いの儘リメイン カースとは、神具から啓示を受けし者。


奇跡人スーパーナチュラルと同じく神具の力は使えるのだが、加護を与えられていないため、使い続けるとその身が破壊される。


メゾンマルジェラはそのことを理解しているようで、まるで時でも止められたかのような超スピードを見せたメイカを恐れずに口角を上げた。


「それを知っているからって、どうしたって言うのよッ!」


メイカは両手を広げてメゾンマルジェラへ光を放ったが、その攻撃は躱されていつの間にか背中に回っていた光に首を絞められる。


その蛇のように動く光は、メイカの首を絞めると神具を使わせないように彼女の目を覆い、それから再び全身を拘束。


触手に絡み取られるかのように、メイカは締め上げられてそのまま意識を失った。


「あっけないわね。さて、後の神具はロダルテに任せて、私は先にイード様のところへ戻るとしましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る