#511

だが、ジャズは何度も同じことを言って彼女を止める。


リーディンは迷っているようだった。


経典アイテルはまだ彼女の側に浮いているが、動きは止まっている状態だ。


それを見たサーベイランスは何か思いついたのか、ジャズのところまで飛んでいく。


「なら、こいつらを全員殺してやる。そうすれば理解できるだろう?」


ジャズの目の前に立ったサーベイランスは、リーディンに向かってそう言った。


その瞬間、ジャズはインストガンの銃身の部分を握って殴り掛かるが、サーベイランスに受け止められてしまう。


「まずはこいつからだ」


サーベイランスは掴んだインストガンを粉々に握りつぶすと、そのままジャズへと手を伸ばそうとした。


ジャズはその手を避けて後ろに回り込むと、サーベイランスの後頭部へ蹴りを喰らわせる。


しかし、サーベイランスは何もなかったかのように振り返り、彼女の首を掴んでそのまま吊り上げた。


「どうした? 早くしないとこいつが死ぬぞ」


リーディンに神具を使わせようと挑発するサーベイランスだったが、ジャズは吊り上げられたまま声を張り上げる。


「大丈夫だよリーディンッ! こんな奴なんかに……絶対負けないッ!」


「この状況でよくそんな台詞が吐けるな。自分の命よりも他人が大事か? やれやれ、善意の伝染も考えものだな」


「あんたなんか……あんたなんかぁぁぁッ!」


ジャズが叫んだ瞬間、そこへ飛び込んきた二つの影が見えた。


その突進の衝撃で、サーベイランスはジャズから引き離される。


「ジャズに触るなッ!」


一人はミックス。


そして、もう一人は――。


「ったく、命知らずの身内がいるとこっちまで身体張らなきゃなんねぇ」


リーディンと共にライティングを安全な場所まで運んだジャガーだった。


サーベイランスはジャズを助けに入った二人を見て、眉をひそめるような表情を見せる。


「嫌になるな……。こういうのを嘔吐しそうだというのか。いや、反吐へどだ。まったく反吐が出そうになる」


ジャガーはジェットパックで空へと浮かびながらサーベイランスへ電磁波を発射。


それをわかっていたかのように、サーベイランスも空へと飛び、ジャガーに向かって振りかぶると、まるでバレーボールの球のように地面に叩きつける。


「まあ、私は反吐など吐けんがね」


「ジャガーッ!? クソォォォッ!」


下から叫んだミックスはそこからサーベイランスを狙って跳躍。


そのときの彼の機械化した拳には、黒い渦のようなものが纏い始めていた。


「なんだこれは!? 身体が動かんッ!? えぇぇぇい適合者めッ! 何かしたのかッ!?」


突如現れたその黒い渦の影響か。


サーベイランスの宙に浮いたまま動けなくなっていた。


あり得ない状態に陥ったサーベイランスは何もできずに、ただ狼狽えることしかできなかった。


そして跳躍したミックスは、その黒い渦を纏った拳を振り上げてサーベイランスへと向かっていく。


「ミックスッ! 決めちゃってぇぇぇッ!」


叩きつけられたジャガーを抱き起していたジャズが叫ぶ。


「こいつは不味い、不味いぞッ!」


「うおぉぉぉ! シャドォォォウッ!」


咆哮と共に突っ込んでいったミックスの拳は、そのままサーベイランスの身体を貫いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る