#487
――その頃、サーベイランスと向かい合っていたノピアとサービスの前にも特殊能力者たちが現れていた。
サーベイランスはゆっくりと宙に浮きながら、現れた子どもたちの後ろへと移動し、その口を開く。
「さて、私を倒したいならまずこの子らを倒さなければならない。それがお前にできるか? 当然できるよな? 何故ならお前は虐殺者なのだから」
得意気に言うサーベイランスに、サービスは表情を曇らせていた。
だが、一方のノピアは全く動揺することなくピックアップブレード――光剣の刃を彼らに向ける。
「そうだよな、そう来るよな。さすがは英雄ヴィンテージ。世界を救うためならば多少の犠牲はしょうがないと考える。まったくご立派なことだよ」
ノピアの態度にサーベイランスは肩を揺らすと、誰も訊ねてもいないのに何故特殊能力者の子どもたちがノピアたちを襲うのか説明し始める。
「せっかくだから教えておいてやろう。この子らはバイオニクス共和国の実験体――テストチルドレンと呼ばれる子どもたちだ」
テストチルドレンとは――。
共和国内にある研究所の被検体に選ばれた子どもたちのこと。
実は共和国に住む学生のほとんどがテストチルドレン出身であり、その脳には記憶操作のチップが埋め込まれている(ロボトミー手術の応用)。
サーベイランスはこのチップにネットワークから干渉。
そして、あるシステムを使って彼らをコントロールしているのだと言う。
「私の人工知能には、共和国上層部が組み上げたシステム。
基本的には現状から導き出される最悪な状況を想定するものだが、サーベイランスはこのシステムを使って対象者に未来に起こりえる悪夢を見せる。
特殊能力者の子どもたちは、このシステムから脳へと送られた未来を見て、サーベイランスに従わなければこの世界が終わると思っているのだ。
「この者らは子どもだから私に騙されていると思うか? いや、違う。この子らの考えは正しい。誰もが幸福になりたいし、大小の差はあれど世界を良くしたいと思っているものだ。それに、この子らはずっと不遇だった。望まぬ特殊能力などを与えられ、何年も実験動物のように扱われてきた。もう誰にも自分たちのような目に遭ってほしくないという善良さは、人間が言う正義そのもではないか? そして、こうしてお前たち前時代の人間の罪をこの子らが裁いてくれる。その後に待っているのは、理不尽も不条理もない誰もが平等な世界……つまり平和だ」
特殊能力者の子どもたちを盾にし、サーベイランスは実に楽しそうにしている。
それを見て、ピックアップブレードを構えたノピアは前に出ると、サービスへ声をかける。
「私が彼らを引きつける。サービス、君はサーベイランスからシステムを取り戻せ」
「だけど、もうこの子たちは自分の意思で動いているよ。いくら共和国のシステムを取り戻しても、この子たちは止まらないと思う……。たとえあなたでも、こんないっぱいいる能力者を相手するのは……」
「私を誰だと思っている? 心配はいらない。こっちは任せて君はサーベイランスのところへ行ってくれ」
ノピアはそう言うと、特殊能力者の子どもたちへと歩を進めた。
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