#470
ストリング帝国の大使館の地下施設で、ミックスとラヴヘイトはジャガーと――。
さらにジャズ、ウェディング、リーディンとそれぞれ戦闘用の装備へと着替えていた。
「あんたら、絶対に覗くなよ」
「誰もお前の貧相な体なんて見たくねぇよ。その台詞はもっとオッパイがでかくなってから言いやがれ」
遮る壁がないためか、ジャズが弟にそう言うと、ジャガーはそれをいつもの軽口で返した。
ジャズはうぐぐと表情を歪めると、自分の胸に両手を当てる。
「ジャガーの奴……あとで殺すッ!」
「おいおい……」
そう殺意を
リーディンはそれが本気にしか見えず、冷や汗を掻きながら止めた。
「じゃあ、サーベイランスのロボット軍団との戦闘中に
横から、すでに帝国の軍服に着替えたウェディングが余計なことを言い始めた。
彼女は着なれない軍服の袖を捲りながら、どうやって始末するかの案を出す。
「戦死と見せかけて後ろから撃ち殺してやるんです!」
「戦場で気に入らない奴を始末するときの定番よね」
リーディンは物騒な話をしている二人の会話を聞き、たかが胸のことくらいでそこまですることはないと言ったのだか――。
「女の身体的ことを弄る奴は地獄に落としてやらなきゃ」
「そうです! たとえどんな権力者でもお金持ちのイケメンでも許しちゃいけないことはあるんですよッ!」
「……なんか悪い冗談だと思ってたけど……。思想が強すぎてジョークに聞こえなくなってきたよ……」
リーディンは、悪ふざけくらいの感覚で話を聞いていたが。
ジャズとウェディングを見て、これは本気かもしれないと、また冷や汗を掻くのだった。
そんな空気の中――。
突然ジャズが二人に礼を言い始めた。
ウェディングには、先ほどの小競り合いで自分の気持ちを汲んでくれたことに対して――。
そして、リーディンにはサービスを庇ってくれたことに対して、それぞれありがとうと笑顔で言う。
「そんなッ!? 私は別にお礼言われるようなことしてないですよ!」
「
礼を言ったジャズにウェディングは慌てて言い返し、リーディンのほうは笑顔を返した。
そして、三人とも深い青色の軍服に着替えると(ジャズはすでに軍服だったが新しいものに)、ノピア、ベクター、サービスがいる出入り口へと向かって歩き始める。
「二人とも武器はいらないの?」
ジャズが何も持たないウェディングとリーディンに訊ねると、二人はそれぞれ答える。
「こう見えてもワタシ、
「私も同じです。銃なんて使えないですから」
リーディンの後に、ウェディングが答えると、彼女はジャズとリーディンに向かってある提案する。
それは、この戦いが終わったら皆でパーティーをしたいというものだった。
「もうすぐクリスマスですしね。みんなでパァーとやりましょう」
「クリスマス? 共和国には毎年冬にそんなイベントがあるのか? 帝国にそんな行事はないけど?」
「ワタシも知らないな。クリスマスなんて」
ウェディングはそう答えた二人に、ならばこれを機にクリスマスパーティーを毎年やろうと言い始める。
ジャズはそうやってはしゃいでいる彼女を見て、ただ馬鹿騒ぎしたいだけだろうと思いながらも、笑うのを堪えられなかった。
一方のリーディンは、ウェディングのことを想像していたよりも子供だったと思っていた。
「絶対、ぜぇ~たいにやりますからね!」
「はいはい、ちゃんと付き合ってあげるから。ここからは気持ち切り替えて行きましょう」
そしてジャズがそう言うと、ウェディングとリーディンも表情を真剣なものへと変え、強く拳を握るのであった。
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