#468

サービスがノピアにお礼を言うと、ミックスやジャズと向き合っていたベクターは武器を下ろし、ラヴヘイトに手を振って動かないように指示を出した。


「ノピア将軍、何故“それ”に手を貸したんだ?」


ベクターが訊ねると、ノピアは皆の顔が見える位置まで歩き、その口を開く。


「ベクター長官、ルーザーリアクターのことは知っていますよね」


「ああ、ただのシステムを管理するだけの人工知能だったサーベイランスがあれだけ巨大な力を手に入れたのは、ルーザーリアクターが付いた身体を与えられたからだろう。それも……共和国上層部が直々に……」


ベクターはすでに確認して来たのか。


バイオニクス共和国の上層部であるグレイファミリーが、サーベイランスによって殺されてしまったことに表情を曇らせている。


そして、だからこそサーベイランスと同じ力を持つサービスは始末するべきだと言葉を続けた。


だが、ノピアは自分たちだけではサーベイランスには勝てないと言う。


「サーベイランスは共和国のすべてのシステムをコントロールしている……いや、もしかしたら監視の目だけでいえば世界規模だろう。とてもじゃないが、そんな奴を相手に我々だけでは勝てない」


「みんなが力を合わせないままならね」


ノピアが言葉を終えると、そこへサービスが間髪入れずにそう言った。


サービスの言葉を聞いたラヴヘイトは、呆れた様子でその鼻を鳴らす。


「何が皆が力を合わせないとだよ。人工知能のくせに子供みてぇなことを言うなぁ」


「あなたとベクター、それからウェディングはあたしのことをサーベイランスの味方だと思っているみたいだけど……」


「違うのか? いいか、これからはサービスと呼ぶぞ。サービス、君は誰の味方だ? はっきりと答えてもらおうか」


ラヴヘイトとサービスが話していると、そこにベクターが入って来て幼女に訊ねた。


サービスは寂しそうな顔をすると俯いた。


そして、ベクターの問いに答える。


「そう簡単なことじゃない……。」


「ならさっさと簡単にしてくれよ」


ラヴヘイトが茶々と入れるように言うと、サービスは少し考えてから答える。


「サービスは命の味方……この地球ほしの味方だよ。でも、それは……サーベイランスも同じ……」


「なら、やはりサーベイランスと君は同じだということか?」


再びベクターが訊くと今度はリーディンが会話に入って来る。


「それは違うよ! サービスはサーベイランスとは違う。少なくともこの子は……ワタシを救ってくれた……」


リーディンは以前にサービスを襲ったときに、経典アイテルの力を暴走させてしまい、その身がバラバラになりそうになった。


そんな彼女を助けようとしたジャズも、その場にいて巻き込まれてしまった共和国の住民たちも、すべてサービスが救ってくれたのだと、リーディンはベクターに訴えかける。


だが、それでもベクターはまだサービスを疑っている。


彼はリーディンの話を聞いても、今にも声を張り上げそうな顔でサービスに質問を続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る