#464
現れたベクターの後ろには、顔立ちの整った長身の青年とミックスとジャズがよく知っている少女が立っていた。
共にハザードクラス――
ミックスがウェディングに声をかけようとするよりも先に、ベクターが静かながらよく通る声で言う。
「自分たちが何をしようとしているのかわかっているのか? サーベイランスをもう一体増やしたら我々ではどうしようもなくなるぞ」
「あんたは誤解してる。ここで寝てるのはサービスだ。サーベイランスじゃない」
ジャガーがひょうきんに答えると、彼は手元の電子機器に付いたコンソールを打ち込んでいく。
すると、周りにあった電子機器が起動。
機械音を立てながらボックスに繋がったケーブルが震え出す。
「同じルーザーリアクターで動く化け物だろう」
「違う! サービスは化け物なんかじゃない!」
「そうだよ! サービスのことをよく知らないのに化け物扱いするなッ! ウェディングもだよ! 俺たちを信じてくれッ! サービスは良い子なんだ!」
ベクターたちに向かって叫ぶジャズとミックス。
二人が詰め寄って来ると、ベクターはしょうがないといった表情でボックスへと近づこうとした。
そして、ラヴヘイトも動き始める。
(不味い、向こうはハザードクラスが二人、いくらミックスやリーディンがいてもッ!?)
バイオニクス共和国から選ばれた最も優秀な人間――ハザードクラス。
こちら側はマシーナリーウイルスの適合者であるミックス。
さらに神具から啓示を受けて
ジャズがそう思いながらジャガーから渡された拳銃タイプの電磁波放出装置――オフヴォーカーを構えると――。
「うおぉぉぉッ!」
ウェディングが両手の甲からダイヤモンドの剣を突き出して飛び掛かって来る。
彼女の能力は
実質的にどんな重傷を負おうが、どんなウイルスに感染しようがすべて正常な状態に治してしまう治癒能力。
ウェディングはカシミア·グレイ主導の元に、バイオニクス共和国のとある研究所で行われた
その全身の
それは治癒能力の後付けであり、彼女の本当に恐ろしいところは心臓を潰されようが、頭を吹き飛ばされようが、瞬時に蘇生できることである。
「やめてウェディングッ!」
ジャズは彼女を撃てなかった。
向かって来たウェディングはそのままジャズの飛び越えると、ボックスに繋がれたケーブルをダイヤモンドの剣で切り落とす。
「なんてことするの!? これでもしサービスに何かあったらどうするつもりッ!?」
「ジャズ姉さんは間違ってます! こいつはサーベイランスと同じ人工知能でしょ!? ならあいつと同じことをするに決まってる!」
二人が言い争っていると、リーディンがトランプカードを投げつける。
放たれたトランプカードは爆発し、周囲を煙で覆った。
「クソッ! ルートの変更だ。ケーブルじゃなくボックスの内部装置に切り替える!」
だが、いつの間にか目の前に現れたラヴヘイトによって電子機器が蹴り飛ばされた。
そして、ジャガーは作業用ジャケットの内ポケットに入れていたオフヴォーカーを発射。
電磁波でラヴヘイトを吹き飛ばそうとしたが――。
「無駄だ。俺にそんなもんは効かねぇよ」
能力によって電磁波は彼の体内にエネルギーとして吸収されてしまった。
ラヴヘイトの能力は
あらゆる種類の運動エネルギーを吸収、蓄積し、 自らの望む形に変換して放出するもの。
当然殴られてもビクともせず、爆発、核エネルギーをも吸収できる
吸収したエネルギーは、身体能力、腕力、耐久力、治癒力などの増強、エネルギーブラストなどとして利用。
だが、自動的に発動できるものではないため、意識が途切れたり不意打ちには弱い。
さらにラヴヘイト自身が相手の攻撃の原理を理解していないと能力の効果を発揮できないが、電磁波程度では吸収されてしまう。
「何やらその中の化け物に思い入れがあるようだな。だが、悪いが破壊させてもらうぞ」
サービスが眠るボックスへと近づいたベクターが、ミックスたちに向かってそう言った。
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