#457
「ライティングッ! ジャズを、ジャズを助けてッ!」
悲痛な叫び声をあげたミックス。
彼はライティングになんとかできないかと訊ねたが、落ちていくジャズを助けるには今抱えているリーディン、ジャガー、ミックス三人を放り出さないと難しいと答えた。
「いや、なんとかなるさ。ミックス、リーディン。お前ら、もうダイナコンプの影響はないだろ?」
すると、ジャガーが二人に声をかけ、ある提案をする。
すでにアーティフィシャルタワーから出ているため、特殊能力者の力を妨害する装置――ダイナコンプの影響はなくなっている。
この高度からならマシーナリーウイルスの適合者であるミックスなら無事に着地できるはずだと。
「だけど、今から飛んでも落ちてるジャズのほうが速いよッ!?」
しかし、落下する速度はジャズのほうが速く。
今からミックスが助けに向かってもジャズには追いつくことはできない。
そんな大声で訊ねて来るミックスに、ジャガーは言う。
「そこは
「そういうことね。了解」
リーディンはジャガーにそう言われて理解した。
ミックスは彼が何を言っているのかわからなかったが、迷うことなくライティングの身体から手を放す。
トレンチコートの内ポケットに手を伸ばし、リーディンは複数のトランプカードを落ちていくミックスを狙って投げる。
それでようやくミックスはジャガーの意図が理解できた。
リーディンは、経典アイテルから啓示を受けた
彼女の能力の一つに、手に持った物体に破壊エネルギーを込める力がある。
経典とトランプカードの間に自分の体を経由させ、呪文を唱えることでカードに経典の魔力を込めて投げつけるものがある。
破壊力はインストガンなどの電磁波と同じくらいで相殺可能。
これは加護を受けていない彼女でもノーリスクで使用可能。
「
ミックスは機械化させた両腕を構えてトランプカードを受けた。
その爆破の衝撃で一気にジャズのところまで吹き飛ばされる。
「ジャズッ! 俺に掴まってッ!」
トランプカードの爆破を受けて吹き飛ばされたミックスは、落下していくジャズへ手を伸ばす。
「ミックス!? あんたまた無茶してッ!」
「ジャズを助けるためならいくらでも無茶するよ! いいから掴まって!」
ジャズはミックスの手をガッチリと掴む。
そして、ミックスはジャズを抱きかかえて地面へと着地。
マシーナリーウイルスの力で機械化させた両足で、落下時の衝撃を吸収する。
「ジャズ……。よかった……」
「ありがとうミックス……。で、いつまでこのままでいるの?」
「うわぁッ! ごめんごめん!」
両手で抱きかかえたジャズを慌てて下ろすミックス。
ジャズはそんな彼から目を逸らし、顔を真っ赤にしてしまっていた。
着地していたミックスとジャズの後から、ジャガーリーディンを抱えたライティングがゆっくりと降りて来る。
「ふぅ、これでよしと」
「ねえジャガー。この後はどうするの?」
ライティングが訊ねると、ジャガーはクルリと振り返った。
「とりあえずノピア将軍からの連絡待ちだ。たい焼き屋へ行くぞ」
「たい焼き屋……?」
リーディンは、ジャガーの言葉にポカンと呆けているミックス、ジャズ、ライティング三人を見て、クスっと笑った。
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