#455

ノピアの言葉を聞いたライティング、ジャガー、ジャズの三人は慌てて声を返したが、突然ポツンと通信が切れてしまう。


ライティングは金属の両手両足を振り回して機械人形を一掃すると、ノピアのいる会場内へ駆け込もうとした。


「おいどこへ行くんだよ!? さっさとずらからねぇとヤベェって!」


そんなライティングの肩を掴んでジャガーが止める。


だが、ライティングはそれでも会場内にいるノピアのところへ行こうとした。


彼はジャガーを振り切り、再び走り出すと今度はリーディンが目の前に現れる。


「よくわかんないけどヤバいんでしょ、ライティング。ここは急いで脱出しないと……」


「でも、会場にはまだノピア将軍が……」


ライティングはリーディンを見て立ち止まったが、まだノピアの元へいくのを諦めているわけではなさそうだった。


ジャズがそんな二人の間に割って入り、思いっきり声を張り上げる。


「ライティングッ! さっきも言ったでしょ!? ここはノピア将軍を信じて逃げましょう!」


ジャズはもしノピアが手を貸してほしかったら、先ほどの通信でそれを伝えて来ていたはずだと言った。


つまりノピアがそう指示をださなかったということは、自力で切り抜けられるということなのだと。


しかし、それでもライティングは納得できずにいるようだった。


そんな彼にジャズは静かに口を開く。


「ライティング……。あなたはリーディンだけは助けてあげないと……彼女がどれだけあなたのことを想っていたのか、わかってるでしょ?」


ジャズの言葉にライティングもリーディンも俯き、何も言えなくなっていた。


だが、ライティングはすぐに顔を上げると、アーティフィシャルタワーを脱出することを決意する。


「ジャズ、君の通りだ……。ボクは……リーディンを守らなくっちゃ」


「ライティング……」


ライティングがそう言うと、リーディンは嬉しそうに身を震わせていた。


そんな彼女を見たジャズも、同じように笑みを浮かべている。


「よーし、じゃあ早くここから出ようぜ」


「良いとこで水を差すな! というかジャガー! あんた極秘任務って聞いてたけど、共和国にいたのッ!?」


「積もる話は後だ。それよりもこっから早く逃げるんだよ」


双子姉弟であるジャズ、ジャガー。


数年ぶりの再会では会ったが、そんな感傷に浸る時間はない。


このタワーは爆破されるのだ。


「いや~それにしてもこうやってみんな揃うと、なんか同窓会みたいだよね。あッでも俺、同窓会したことないや」


「いいから黙って走れッ!」


緊迫した空気を読まないミックスに、ジャズが怒鳴り上げた。


そして、全員急いでエレベーターへと走る。


だが、エレベーターの電源は落とされていた。


いくらボタンを押そうが動くことはない。


「クソッ、サーベイランスのヤツだな」


「どうすんの!? これじゃ外に出られないよッ!」


苛立ってエレベーターの扉を蹴るジャガーにミックスは訊ねたが、電源を入れるにはさらに上の階へと行かなければならないと返事をした。


だが上に行く方法もエレベーターのみ。


しかも、おそらくはアーティフィシャルタワー内の電気系統はすべてサーベイランスにコントロール下にあると思われ、たとえ電源を入れても意味がないと思われる。


「打つ手なしなの……」


ジャズが弱々しく呟いた。


ミックスたちはサーベイランスによって、完全に脱出する術を失ったかと思われたが――。


「ボクに考えがあるよ」


ライティングが皆にそう言った。

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