#450
会場内いる人間の態度を確認したサーベイランスは、さらに芝居がかった動きを見せた。
憂鬱そうに手を自分の顔に当て、首を左右に振っている。
「中には善良な者もいた。だが、これは仕方のない犠牲だったのだ。物事を為し遂げるには強い意志が必要だ。私は自分の大事な者らを手にかけることで、その強い意志を得たのだ」
「カシミアも……殺したの……?」
サーベイランスが物悲しげな言い回しが終わると、会場の中央の席にいたウェディングが呟くように訊ねた。
ノピアから彼女へと振り返ったサーベイランスは、申し訳なさそう答える。
「あぁ……カシミア·グレイも私が殺した」
「うわぁぁぁッ!!」
その言葉を聞いたウェディングは、叫びながらサーベイランスへと飛び掛かった。
だが、すぐに動き出した機械人形たちがウェディングを床に押さえ付ける。
「よくも、よくもカシミアをッ!!」
無理矢理床へと顔を押し付けられても、ウェディングは叫び続けた。
サーベイランスは、そんな彼女の顔を覗き込むように屈む。
「
バイオニクス共和国上層部の一人であるカシミアがその研究を進め、そして生まれたのがウェディングだった。
彼女以外にも二人の被験者がいたようだが、施設を脱走したため、その後はウェディング一人だけ人体実験をされ続けた。
その全身の
しかし、これはカシミアが興味本位で行った実験で、その力は治癒能力の後付けであり、ウェディングの本当に恐ろしいところは、たとえ心臓を潰されようが、頭を吹き飛ばされようが、瞬時に蘇生できることである。
だが、特殊能力者の力を妨害する装置――ダイナコンプの出す電波により、今の彼女の身体は自己再生もダイヤを露出することもできない。
「そんなに彼女のことが恋しいか? カシミアから見ればお前など実験対象に過ぎないというのに」
「うるさいッ! カシミアは、カシミアは私の……私のぉぉぉッ!」
訊ねるサーベイランスにウェディングは叫び返したが、彼女を押さえ付けている機械人形たちがさらに力を加える。
そのせいで、床に顔がめり込んだウェディングは、もう叫ぶこともできなくなった。
「心配するな。私がその心の穴を埋めてやる。完全なる管理から生まれる幸福でな」
サーベイランスがそう言うと、ウェディングを押さえ付けていた機械人形たちが一瞬でバラバラになった。
何か高出力のレーザーで焼き切られたような機械人形を見て、サーベイランスは屈んだ状態から立ち上がる。
「なんのつもりだ? 憐れな虐殺者よ」
サーベイランスの目の前には、マグマのように赤く輝く光剣を持ったノピアが立っていた。
ノピアは破壊した機械人形を蹴り飛ばすと、その握っている光剣――ピックアップブレードの刃をサーベイランスへと向ける。
「お前は知らないようだから教えやる。人の心の穴は、幸福だけでは埋められない」
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