#405
ロウルに会えたことで夢中になっていたためか、オーデマとパテックはメイカが出ていったことに気が付いていなかった。
メイカは屋敷内の廊下を歩きながら、フンッと鼻を鳴らしている。
「何なんだよ、あいつら……。あたしに会いに来たんじゃないのかよ」
メイカはオーデマとパテックに向かってさっさと帰るように言ったくせに、二人が自分のことなど忘れてロウルと話していることに苛立っていた。
そして、友人とはどうせこういうものなのだと、スタスタと屋敷内のある場所へと向かっていく。
「たしか、ジジイが鍵をかけてる部屋があったわね。そこに秘密の術の謎が隠されているはず……」
メイカはまだ牢屋に入れられる前の記憶を掘り起こし、クオが自分が入れないようにしていた部屋の存在を思い出していた。
彼女はその部屋にこそクオが自分に――いや、この里――
使用人たちに見つからないように――。
こっそりとその鍵のかかった部屋へと辿り着いたメイカは、扉のドアノブを手を伸ばして掌を当てる。
「ジジイは
ドアノブを掴んだ手から光が現れる。
メイカが掌から体内にある生命エネルギーを放ったのだ。
すると、彼女の
メイカはニヤリとほくそ笑むと、周囲に誰もいないことを確認してから中へと入って行く。
「これが隠していた部屋……?」
そこは棚で埋め尽くされており、凄まじい数の本があった。
普段まったく本を読まないメイカからすれば、いくらここにクオの秘密が隠されている可能性あるとしてもあまり興味を持てない。
「うぅ~本かぁ……さすがにこれをすべて読むのは……無理ッ!」
本に囲まれた空間で両手で頭を抱えるメイカ。
彼女が一人呻いていると、棚にある本の一つが光を放ち始めた。
どうやら先ほど扉を開けたメイカの生命エネルギーの影響で、反応をみせているようだ。
メイカはこいつは幸運だと、早速その本を手に取った。
「いや~、やっぱあたしってラッキーガールだよね。探すことなく見つけられたっぽいし」
数年も牢屋に入れられていて何がラッキーガールなのかわからないが、彼女は手に取った本を開く。
開いた本から出ていた光とは違う、禍々しい黒い光が放たれていた。
メイカは感じていた。
この黒い光は生命エネルギーであることはたしかだが、何かが違う。
きっとこれがクオが隠している秘密なのだと、本を読み続けていると――。
「スノー&スティール、アイテル、オオヅキ、ヴァージン、シストルム、ズルフィカール、クロノス……。それらに加護を与えられし者を
専門用語ばかり出てきて混乱してしまっていた。
だが、その中にメイカが知っている言葉があった。
それはクロノス――。
クオが大事にしている懐中時計だ。
メイカはマスター·クオが時計に名前を付けていることを陰で馬鹿にしていたが、それが神具と呼ばれる奇跡を起こす道具だということを本を読んで理解する。
「でも、マスターはいつも持ち歩いているわけじゃなかったよね……。もしかして、この部屋のどこかに……?」
メイカは本を手に持ったまま、部屋の中を歩き始めた。
彼女は無意識でやっていたのだろう。
その両手には
「これが神具クロノス……?」
そして、そんなメイカの掌に引き寄せられるように、懐中時計が彼女の手に握られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます