#397

それからソウルミューは、悲しそうな声で話を始めた。


なんでも自分本位で決め、それが正しい、それ以外は間違いだと、思い込んでしまう気持ちはよくわかる。


実際にそのほうが早く物事を動かせるし、何よりも精神的に楽だ。


だが、その方法は本当に正しいのか?


本当に間違っていないと言えるのか?


他人の意見も聞かずに自分で決めたことでは本当のことは理解できないと、ソウルミューは呼吸するのも苦しそうに言った。


「なら貴様はもっと議論をすべきだとでも言うのか? それこそ時間の無駄だ。世界の問題は、話し合いで答えが出るようなことではないのだ」


「そう……答えは出ない……。だけど、常に話し合うことで見えてくるものがあると……オレはあいつらと会って思った……」


正反対の意見のぶつかり合いで、顔を合わすのも嫌になることもある。


実際に顔を突き合わせれば喧嘩ばかり。


文句や皮肉の応酬になる。


だが、それでも互いの意見を言い合い、話し合うことが大事なのではないかと、ソウルミューはバーバリーに伝えた。


彼の言葉を聞いたバーバリーは、スッと肩から力が抜けているようだった。


そして、視線をソウルミューへと戻して口を開く。


「終わることのない議論を続けよと、貴様はそう言うのだな?」


「ああ、それがオレが今までできなかったこと……今まで逃げていたことだ……」


「ふふ、たしかに……そうかもしれん。私も逃げていたのかもしれんな……イード様や同門の仲間たちから……」


バーバリーはソウルミューの言葉に俯いた。


だが、すぐに顔を上げて声を張り上げる。


「だが、それでは間に合わん! 議論をしているうちに世界が愚か者によって滅ぼされる。この地球ほしが食い潰されてしまうッ! たとえ間違っていたとしても、私は私なりのやり方でこの世界を救ってみせるッ!」


そして手の先を失った腕をソウルミューへと向け、黒い光を集め始める。


「世界を救うには神具がいる。絶対に必要なものだ。貴様の話……なかなか面白かった。名乗れ、虫けら」


「オレはソウルミュー……。お前の知っているブルースの息子だよ」


「ソウルミューか。その名は私の胸に刻まれた。もちろん虫けらとしてでなく人間――ソウルミューとしてな」


ソウルミューは覚悟を決めた。


心の中では妹のリズムに謝りながら、仲間たちが脱出してくれていることを願っている。


(頼むぜ……クソ親父……。みんなを連れて逃げていてくれよ……)


黒い閃光が崩れる基地内を照らしていく。


だが、そのときバーバリーの背後からある人物が現れた。


「そいつに手を出すな。私の息子だぞ」


渋く乾いた声の後、バーバリーの首はその現れた人物――ブルースによって切り落とされた。

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