#395
目の前さえ見えない暗闇の中でダブは叫び続けた。
次第にボロボロと崩れていく身体のことなど気にせずに、シストルムの名を呼び続けている。
「やっぱり僕じゃ……ダメか……」
次第に意識が薄れる。
だが、ダブに痛みはなかった。
ただ暗闇の中で、輝きながら崩れていく自分の身体を見つめ、その場に俯く。
そんな諦めてしまったダブの耳に、ある男の声が聞こえてくる。
「ダブッ! 手を伸ばせッ!」
それは、機械いじりしか能のない男――ソウルミューの声だった。
ダブは薄れ行く意識の中で、父であるイード、兄であるシンの顔が浮かんでいた。
そして、暗闇から差し出されたソウルミューの手を握る。
すると、目の前にソウルミューの姿が現れた。
ソウルミューもダブと同じように、その身体が光輝きながら崩れ始めてしまっている。
「ソウルミュー……ごめんよ。僕じゃダメだったみたいだ……」
「ダメなもんか! お前がいなかったらハシエンダの奴らもオレも死んじまってたよ! おい半分猫ッ! いい加減に目を覚ませよ! リズムがお前を待ってんだッ!」
手を繋ぎながら身体が崩れていく二人だったが、ソウルミューの叫びの後――。
古代時代にありそうな襟飾り付けた、顔から全身にかけて灰色と黒の半分の毛色をしている猫――シストルムがその姿を現した。
「嬉しく思うぞ……お主らのその気持ち……。だが、我はもう持たぬ」
弱々しく口を開くシストルムに向かって――。
ソウルミューが声を荒げると、ダブもシストルムを励ますように大声を出す。
「なに弱気なこと言ってんだよッ!? あの偉そうに上から目線で喋ってたお前はどこへ行った!?」
「シストルム、一緒に帰ろう! みんなが待ってるッ!」
二人の言葉を聞き続けたシストルムは、クスっと笑うと――。
「決めたぞ……。我はお主たちに決めた……」
嬉しそうに呟くとその身体が輝き始めた。
暗闇が晴れ、気が付くとダブの手にあった体鳴楽器――シストルムの光がダブとソウルミューの全身を包んでいる。
それは先ほどバーバリーが神具を使ったときの黒い光ではなく、暖かな白い光の輝きだった。
「そ、それは加護の光……。馬鹿なッ!? まさか私の術を解いたのかッ!?」
両手を失ったバーバリーが叫ぶ。
ダブとソウルミューは、その光に包まれながら信じられないくらい穏やかな気持ちになっていた。
「これはあの半分猫の力なのか?」
「まさかシストルムが僕らに加護を……。
その姿は見えないが、手に持っている神具からはたしかにシストルムを感じることができる。
ソウルミューとダブは、シストルムを取り返すことに成功したのだ。
「そんなことがあってたまるかッ!」
失った両手から凄まじい光を放ち始めたバーバリーは、突然周囲を破壊し出した。
そのせいで壁が壊され、天井が崩れ落ちてくる。
「神具を返せッ! それは私が世界を救うために必要なものだッ!」
崩壊していく
バーバリーの
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