#391

《おい、しっかりしろミウムッ! このままじゃ機械人形オートマタになっちまうぞッ! お前もだブライダルッ! そのままアメーバになったら元に戻れず知能も失っちまうッ!》


身体を侵食していくマシ―ナリーウイルスの影響で、ルーツーの意識も取り込まれそうになっていたが。


黒羊は二人へ声をかけ続けていた。だが、それで二人の進行が収まるわけはなく。


それぞれミウムが機械化、そしてブライダルはアメーバのようにドロドロになっていく。


「ミウム、ブライダル……お前ら……」


ソウルミューがそんな二人を見て立ち尽くしていた。


その隣ではダブが震えながら言葉を失ってしまっている。


そんな彼らの前にバーバリーが立つ。


「心配するな。すぐにでもお前たちもあいつらの後を追わせてやる」


目の前に立った漆黒しっこくの化粧の男を前に、震えていたダブが声を張り上げた。


「バーバリー! 自分のしていることがわかっているの!? たった一人でお父様に逆らうなんて自殺行為だよ! 今すぐ二人を元に戻して僕にシストルムを渡すんだ!」


「ダブ様……いや、偉大なる最高指導者の息子ダブ·レイヴェンスクロフトよ。もはやあの方は人類の敵、生きた化石、単なる老害にすぎぬ。それはあなたが一番わかっているのではないか?」


バーバリーと問いにダブは表情を曇らした。


バーバリーにはわかっていたのだ。


ダブがずっと父親の考えに従っていた振りをしていることに。


心の奥底で永遠なる破滅エターナル ルーインの教義に反対していることに。


その皮肉のような訊ねかたに何も言えなくなったダブに変わり、ソウルミューが歯を剥き出しにして喰って掛かる。


「いいから半分猫とブライダルとミウムも元に戻せよ! お前とテロ組織の教祖のことなんてどうでもいい! 戻さねぇんなら力ずくで行くぞコラッ!」


ブラスターハンドガンの銃口をバーバリーへと向けて咆哮ほうこうした。


だか、バーバリーは肩を揺らして嘲笑うかのようにソウルミューを眺めている。


「愚かなり……。もはや神具の力を引き出し、奇跡人スーパーナチュラルさえも超えた私に対して、あまりにも愚かだぞ」


「うるせぇ! いちいち喋りかたが芝居がっててウゼェんだよ!」


ソウルミューはバーバリーを罵倒ばとうしなからブラスターハンドガンを撃った 。


だが、掌から現れた光がレーザーを弾き飛ばす。


それでもソウルミューは何度も撃ち続けるが、当然バーバリーの光の壁を破壊することはできなかった。


そして次第に距離を詰められ、その光を纏った拳で殴り飛ばされてしまった。


「ソウルミューッ!?」


「この状況でもなお他人の心配か。何が起ころうとあなたの優しさは揺るがないのだな。素晴らしい……」


バーバリーはそう言うと、ダブの首を掴んで天井に向かって掲げた。

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