#361
「おい半分猫! お前、いくらオレの妄想だからって調子に乗ってんじゃねぇぞッ!」
ソウルミューは自分の膝の上にいるシストルムの身体をカバッと掴むと、両手に思いっきり力を込めた。
彼は、この口の減らない猫のことを痛い目に遭わせてやると考えたのだろう。
だが次の瞬間、反対にソウルミューに激痛が走る。
「うがぁぁぁッ! なんだこれ!? いてぇ! 頭の中が痛くてたまらねぇぞ!」
まるで脳の神経をドリルで少しずつ削られるような感覚に襲われたソウルミューは、のたうち回りながら部屋の中で暴れ出す。
ずっとソウルミューとシストルムのことを見ていた美少年も、慌ててその場から離れる。
苦しむソウルミューに、シストルムは声をかける。
「本当ならこのままその命を絶ってやろうと思うたが、それではリズムが悲しむ。誠に
シストルムがそう言うと、ソウルミューの頭から痛みが消えた。
痛みから解放されたソウルミューには、一体何が起きているのか理解できなかった。
猫が喋っているのは自分が飲み過ぎているからではないのか。
だが、先ほどの激痛が妄想とは思えない。
こいつは――この猫は一体何なんだと、床に腰を付いて情けなくも後退ってしまっている。
すると、その場から離れていた美少年が、シストルムへと近づいていた。
「バカッ! そいつに近寄るな! 何をされるかわかんねぇぞッ!」
ソウルミューは危ないから近寄るなと声をかけたが、彼は止まることなくシストルムの前で立ち止まった。
「神具がどうしてこんなところに……? それに何故猫の姿をしているの?」
「あん、寝具だと? おい、お前も酔っ払ってんのか? そいつはたしかにモフモフだが、どう見ても布団じゃねぇだろ?」
美少年はソウルミューのことを無視してシストルムのことを見つめていた。
シストルムはそんな彼に語り掛ける。
「ダブ·レイヴェンスクロフト……。それがお前の名か」
「僕のことがわかるの!?」
「無論だ。我を何と心得る」
シストルムは、ダブと呼ばれた美少年に言葉を続ける。
世界最大の宗教団体でありテロリスト組織でもある
そんな人物がこんな寂れた町へ来た理由は、神具――つまり自分を狙ってきたのだなと。
《だが道の途中で、あの傭兵の娘と無愛想娘に捕らえられてしまったというわけか》
シストルムはダブの精神から彼の記憶を読み取った。
だが、ダブは何故この猫が、まるで見て来たかのように話せるのがわからない。
これが神具の力なのかと、ただ両目を広げて驚いているだけだった。
「ふん、それにしても情けない。味方が殺されても拳一つ振り上げられんとは。お前もそこの男と変わらん情けない人間だな」
「なんだとこのッ!」
「やれやれ、学ばん奴だ」
「うぎゃぁぁぁッ!!」
懲りずに飛び掛かったソウルミューに、シストルムはまた同じことをした。
先ほどの激痛が彼の頭の中を駆け巡る。
「やめろ、やめてくれオレが悪かったからッ!」
ソウルミューが悲願したとき――。
彼の声に混じって誰かの
「そうだよ……。僕は本当に情けない奴なんだ……」
それは、涙を流すダブの
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