#351

――ジャズたちがヴェルサーを倒したとき。


ミックスは永遠なる破滅エターナル ルーイン最高指導者であるイード·レイヴェンスクロフトの息子シンと戦っていた。


湾曲した刀身で先端が二股に分かれている剣――聖剣ズルフィカールと、ミックスの機械化――装甲アーマードの腕が何度もぶつかり合っている。


「楽しいなぁッ! ミックスッ!」


「馴れ馴れしく呼ぶなッ!」


声を張り上げ合いながら、互いに攻撃を避けずにその武器を重ね続ける。


金属音が鳴り響くたびに激しく火花が散る。


そこへ永遠なる破滅エターナル ルーインの信者たちが現れた。


ヴェルサーからミックスと捕らえ、シンを止めるように言われてきたその集団は、二人のことを囲い出す。


シンは信者たちを見るとその笑みが歪み、明らかに苛立った表情へと変わっていく。


「俺の……俺たちの邪魔をするなッ!」


「マズイッマズイよッ! みんな離れてッ!」


ミックスが信者たちに下がるように叫んだ。


だが、すでに時は遅く。


シンの振るった剣から放たれる青白い光が、二人を囲っていた信者たちへと襲い掛かる。


一瞬でその場が血の海へと変わり、そこらじゅうで悲鳴が上がる。


「やめろぉぉぉッ!」


咆哮ほうこうしながらミックスがシンへと飛び掛かる。


「なんでだよッ! なんでお前は仲間を傷つけるんだ!」


「仲間? こいつらがか? こんな他人にすがって生きるような連中は俺の仲間などではない!」


シンは飛び掛かってきたミックスを剣で振り払い、強引に後退させる。


「それに、連中はただの人間だ。俺のような者とは違う。適合者のお前ならわかるだろう?」


シンは、自分たちは選ばれた人間だと言葉を続ける。


マシーナリーウイルスに適合できる者は、その歴史上アン·テネシーグレッチとローズ·テネシーグレッチのみ。


ノピア·ラッシクは無理にウイルスを操作し、強制的に適合者になっているに過ぎない。


世界で二人だけしかないマシーナリーウイルスの適合者――ヴィンテージと呼ばれる伝説に続いて自在に機械化できる者。


つまりはミックスは選ばれた人間だ。


自分もそうだ。


神具から加護を与えられた奇跡人スーパーナチュラル


世界に限られた人種であるのだと。


「俺たちは選ばれたのだ。こんな連中など仲間ではない」


そんな自分たちをこんな連中と一緒にすべきでないと、シンはミックスへ語り掛けた。


むしろ敵であるミックスに親近感を覚えると、彼は嬉しそうに言っている。


「選ばれた人間なら……特別な人間ならなにをしてもいいのかッ!」


だが、親しみを込めて言ったシンに、ミックスはさらに激昂げきこう


シンの考えなど受け入れられないと、表情を強張らせて声を張り上げる。


「そんなことないだろ!? 俺たちが選ばれた人間だろうが特別な人間だろうが、毎日笑ったり悲しんだりするのは一緒で、みんなと違いなんてないよッ! それに俺たちが人にできないことができるなら、それを困っている人のためや、俺たちがやれることをするために使うべき力じゃないのかッ!?」


「違うな! 俺たちが人間ならお前のいう皆というのはありだ! 何も考えずにただ言われたことに従うだけの踏み潰されても文句一つ言えない者たちなのだ! そんな連中が困ろうが泣き喚こうが俺たちが力を振るう必要などない!」


「俺たちじゃない、そんなのはお前だけだ! 俺はこれからも困っている人がいれば助けるし、俺が困ったら助けてもらう!」


「くだらない宣言をして俺を幻滅させるなミックスッ!」


そして、二人は再びぶつかり合う。

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