#350

髪を左右に束ねて丸め、団子状に結っているお団子頭の少女――ストリング帝国のパシフィカ·マハヤが装甲車に乗っていた。


その装甲車の名前はプレイテック。


その昔に南アフリカのパラマウントグループが作ったといわれる車――マローダーを思わせる外観だ。


ボディの色はサンドイエローとブッシュグリーンの2カラー(砂漠地域なら前者、森林地域なら後者を使う)。


全長六.四メートル 高さ二.七メートル 総重量十トン。


乗員は二人だが、八人まで同乗可能なので、最大で十人まで乗れる。


車両重量約一万一千から一万三千、ホイルスペース約三.五メートル 最大積載量重量五千キログラム。


エンジンには六気筒ターボディ―ゼルを搭載とうさいしていて、最高速度は百キロメートル毎時。


防弾性能、対地雷防御性能にもすぐれ、ホイールは十四キログラムのTNT火薬の爆発にも耐え、厚さ九メートルにも及ぶ窓ガラスは、RPG-7(ロケット推進擲弾すいしんてきだん)の攻撃も防ぐことができるため、特殊能力者でも簡単には破壊できない。


武器はインストガンの大型タイプを車両の上部に付けていて、全方位へ電磁波を撃つことができる仕組みになっている。


まだ先代レコーディー·ストリング皇帝が存命のときにある探索してた部隊が、偶然この戦闘車両を発見し、構造を調べ、それから改良を加えて量産した。


軍の遠征時には欠かせない戦闘車両である。


プレイテックから降りたパシフィカはジャズに駆け寄る。


「どうやらギリギリだったようですね。間に合ってよかったです」


「ありがとう、パシフィカ」


先ほどジャズが帝国に送った電報で連絡を受けた彼女は、幸いなことにこの周辺にいたようで救援にやって来た。


プロコラットとユダーティも、ヴェルサーが気を失ったことで光の檻が無くなり、先ほど蹴り飛ばされたニコを抱いて二人の前に寄ってくる。


「なんだ? このチビッ子も帝国兵かよ?」


「誰がチビッ子ですかッ!」


プロコラットがパシフィカの頭を撫でながらそう言うと、彼女はムッとした表情をしてその手にガブッと嚙みついた。


だが、ヴェルサーが倒されたことでかけられた術が解けたのか。


奇跡人スーパーナチュラルとしての力が戻ったプロコラットには、大して痛みはないようだ。


「ハハハ、怒るなチビッ子」


「チビッ子って言うなッ! 誰ですかこの失礼な人は!」


プロコラットに噛みつき続けるパシフィカだったが、彼は笑っているだけだった。


そんな二人を見てジャズもユダーティも、ニコも笑みを浮かべている。


「さてと、ユダーティ。ジャズとチビッ子のことは頼んだぜ。俺はミックスのとこへ行ってくるからよ」


プロコラットはそう言うと、手に食らいついているパシフィカを払ってその手をスッと伸ばした。


すると、彼の手に神具――陶器オオヅキが飛んで来る。


そしてプロコラットは陶器を放ると、投げた神具と同じように跳躍。


そのまま投げたオオヅキを掴んで飛んでいく。


「ミックスは俺が必ず連れてくる。だから先に脱出しててくれよ!」


遠くから叫ぶプロコラットは、そのまま物凄い速度で消えて行った。

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