#339

ジャズたちがプロコラットと会っているときに――。


ミックスは鍾乳石が見える街中に身を潜めていた。


すでに街には、彼を捜し出そうと永遠なる破滅エターナル ルーインの信者たちが歩いている。


いつまでも隠れ続け、そこら中にいる法衣を着た集団に見つからないようにするにも限界がある。


ミックスはそう考えると、ここはプロコラットやジャズが捕まっているところへさっさと行こうと思っていた。


「とはいっても、どこにいるかわからないから困ってるんだけど……」


一人物陰に隠れながら呟くミックス。


闇雲に暴れ回るか。


それともこのまま隠れてチャンスを待つか。


ミックスは、この後に何をすれば良いか判断できないでいた。


俯きながら地面を眺める。


こんなときに、ジャズか、またはジャガーでも傍にいてくれたらきっとどうすればいいのかを教えてくれる。


自分は今までずっと誰かに頼って生きていたのだなと、ミックスは一人落ち込んでいた


だが、彼はふと自分の胸に手を当てるとニッコリと微笑む。


「そっか……そうだよね……。ありがとう……。俺はただ感じればいいんだ……」


そして、何か――誰かにお礼を言ったミックスは、迷うことなく歩き出していった。


――ミックスが歩み出した頃。


ヴェルサーは、まだ見つからないマシーナリーウイルスの適合者を自分から捜しに行こうとするシンを止めていた。


シンは、まるで急にミックスがどこにいるのかがわかったかのように、突然部屋から飛び出そうとしたのだ。


シンの部屋には今、信者たちが出入り口を固めている状態で、ヴェルサーが彼に捜索隊の報告を待つようにお願いしている。


「今シン様に動かれては困ります。せめてお供の信者をお連れになってくれれば――」


「くどいぞヴェルサーッ! 俺は一人で行くと言っているだろうが! 後ろにゾロゾロと部下を引き連れて戦えるかッ!」


頭を下げ続けるヴェルサーに――。


シンは怒鳴り続けていた。


だが、さすがに多くの信者が出入り口を塞ぎ、この山岳内にある礼拝堂を任されているヴェルサーに丁寧にお願いされているせいか。


力づくで出て行こうとしなかった。


「しかし、何故突然あの適合者の少年を捜しに行こうとするのですか? もしや、シン様には聖剣の力で少年の居場所がわかるのでしょうか?」


「……もういい。下がれ」


「お答えいただけませんか?」


「いいから下がれ! 何度も同じことを言わすなッ! 俺はここで待っていればいいのだろう!」


それからヴェルサーたちに怒鳴り上げたシンは、部屋にあった椅子にドスンと腰を掛けた。


ヴェルサーは去り際に、一応警護の信者を置いていくと言い、扉を閉めて出て行く。


部屋に一人残ったシンは、不機嫌そうにブツブツと独り言を始める。


「ヴェルサーめ……。勘の良い奴だ……クソッ!」

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