#301

踏み込みと同時にブレイクの剣がラヴヘイトへと振り落とされる。


だが、その凄まじい剣撃は彼の手に掴まれてしまった。


すると刃を受けたラヴヘイトの手の周囲の空間が歪む。


「お前の一撃をそのまま返してやるぜ」


ラヴヘイトはそう言いながら、空いているもう片方の手でブレイクへと殴り掛かった。


ブレイクは足で彼の手を蹴り上げ、なんとかその一撃を剣で防ぐ。


だが、その衝撃は先ほどブレイクが放った一撃と同じく凄まじいもので、防いだものの後退させられてしまった。


後ろへと下がらされたブレイクが顔を強張らせると、ラヴヘイトは薄ら笑いを浮かべる。


「ひょっとして、テメェの能力ってのは吸収か?」


「今ので気が付いたのか? 一撃で俺の能力を看破かんぱしちまうとは、さすがは共和国最強だ」


それからラヴヘイトは自分の能力について話し出した。


彼の能力――還元法リダクション メゾット


あらゆる種類の運動エネルギーを吸収し、 自らの望む形に変換して放出するもの。


当然打撃、剣撃などもビクともしないし、さらに爆発、ビーム兵器、電磁波、核エネルギーなども吸収できる。


吸収したエネルギーは、身体能力、腕力、耐久力、治癒力などの増強、エネルギーブラストとして発射するなど利用できる。


「これが還元法リダクション メゾット 。いくらお前の剣技が達人でも、俺からすればチャンバラごっこでしかねぇ」


「バカが、テメェの能力をベラベラ喋りやがって。すぐにそいつの弱点を考えてやんよ」


「そんな時間はねぇよ」


次の瞬間――。


ラヴヘイトはブレイクの目の前に現れ、回りながら蹴りを何度も繰り出し始めた。


刃を立てながら防ぐブレイクだったが、どうやらラヴヘイトは服の下に強化スキンスーツを着ているようで、その強度は刃物をすら通さないものだった。


ダイナコンプによって屋敷内での能力の使用――ブレイクでいえば加護による恩恵が得られない状態で、さらに小雪小鉄リトルたちもいない。


そこに加えてハザードクラスであるラヴヘイトは、プラットホームステレオというダイナコンプから出る電波を遮断するの装置を使っているため、能力を妨害されていない。


「まさか俺が相手の攻撃を待っているだけのマゾ野郎だとでも思ったか? そうじゃねぇ! 俺は攻めてるほうが好きなんだよッ!」


そのうえ、ラヴヘイトは格闘技術も優れていた。


しなるむちように伸びる長い足で、ブレイクの意識を刈り取ろうと襲ってくる。


「どの道お前ら奇跡人スーパーナチュラルは全員始末しなきゃならなかったからな。手間が省ける」


ブレイクはラヴヘイトの蹴りをさばきながら、彼の口にした言葉の意味を考えていた。


奇跡人スーパーナチュラルは全員始末しなきゃならないとは、この男は一体何故そんなことをしようとしているのか。


それは、ラヴヘイトが組んでいる相手――生物血清バイオロジカルのリーダーであるベクターと関係があるのか。


それとも先ほど彼が言っていた――バイオニクス共和国の上層部と直接交渉をすると言っていたことのほうが重要なのか。


頭の中で思考がグルグルと回るが、今のブレイクには考えているほど余裕はなかった。


そして、ついに壁に背を預ける距離まで追い詰められてしまう。


「得意の剣が使えねぇ気分はどうだ、最強? まあ、上には上がいるってことを知って死んでいくんだな。もし天国や地獄っってもんがあんなら役に立つかもしんねぇし」


反撃すれば攻撃は吸収される。


かといってこのままではやられる。


ブレイクがどうすればいいかを考えていると、突然六本の閃光が目の前にいるラヴヘイトの身体へと当たった。


その衝撃でラヴヘイトはそのまま吹き飛び、壁に叩きつけられる。


「どうしたベルサウンド。私の知っているお前はそんなヤワじゃないはずだが?」


いつの間にか階段のいたミウムが、レーザーガトリングガンを構えながらそう言った。

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