#299

ラムブリオンの屋敷は、街中にあるには違和感のある外観をしていた。


彼の趣味なのだろう。


囲いなどは特になく外からでも庭が見え、そこにはパラソルやソファーとプールが見える。


「随分と不用心なところに住んでいるんだな。まるで自分の生活を見せつけているみたいだな」


《今ハッキングしてみたら、屋敷のほうのセキュリティも大したことなさそうだぜ。そいつもすぐに解いちまうけどな》


ミウムが屋敷の感想を言うと、ルーツーが建物内のセキュリティについて話した。


どうやらラムブリオンの住む家は、一般家庭にある程度の防犯対策しかないようだ。


ブレイクはフンッと鼻を鳴らすと屋敷の扉へと向かう。


ミウムはレーザーガトリングガンを担ぎながら彼の後に続いた。


そして、先を歩いていたブレイクは扉を蹴り飛ばすとズカズカと中へと入って行く。


何度か来たことがあるのだろう、ブレイクは屋敷の中を迷うことなく進む。


外観からわかっていたが中もかなり広い。


玄関から廊下を進んで三階まである階段を上がる途中で、何かに起動音が聞こえてきた。


ブレイクは身体に何か膜が張られたような感覚に襲われ、この起動音が正体に気が付く。


「どうやら屋敷のセキュリティは解けてなかったようだぞ」


「この違和感がそのセキュリティか?」


ミウムに訊ねられたブレイクは、起動音の正体について説明する。


今二人が感じている違和感は、ダイナコンプという特殊な周波数を乱射し、マシ―ナリーウイルスの適合者てきごうしゃ奇跡人スーパーナチュラルといった者の能力使用を妨害ぼうがいする装置。


そのため、二人は今や普通の人間と同じ状態にされている。


「この時代にはそんなものがあるのか。だが、問題はないな。余程のことがない限りは能力を使うつもりもなかったからな」


「大した自信だな。だが、相手が特殊能力者だったらそうも言ってらんねぇんぞ」


「うん? まさかのこの装置を無効化できる機器があるのか?」


再び訊かれたブレイクは答える。


プラットホームステレオというダイナコンプから出る電波を遮断するの装置があること。


それでもミウムは特に動揺することない。


問題ないと返事をするだけだった。


「ルーツー、一応そのダイナコンプという装置の電波を遮断できるか試しみてくれ」


《無理だなぁ。完全に独立している》


それから再び階段を上がっていると、玄関から何者かが入ってくる音が聞こえる。


足音は二つ。


ブレイクは階段を駆け上がり、ラムブリオンのいる部屋へと急いだ。


そしてその部屋の蹴り破ったが中には誰もいない。


「どうやったかわからないが、私たちが来ることを察して逃げたようだな」


《しかもちゃんと刺客を送ってくる徹底ぶりだ。こりゃこっちから仕掛けるつもりが罠に飛び込んじまったって感じだな》


ミウムとルーツーがそう言うと、ブレイクが伸縮式を振って重ねてしまっている刃を出す。


そして、一人で足音がする下の階へと向かっていった。


「オレのミスだ。敵はこっちが引き受ける。お前ら逃げろ」


去り際にそう言った彼を見てミウムが口を開く。


「愛想のない奴だな」


《その台詞、あいつもミウムには言われたくないと思うぜ。それでどうする?》


「この時代の特殊能力者がどれほどのものか肌で感じておきたい」


《その言い回しは誤解を生むからやめたほうがいいぜ。思春期の子供には性的な意味にとられちまうよ》


「そういうものなのか?」


担いでいたレーザーガトリングガンを構えたミウムは、そう言い返すとブレイクの後を追った。

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