#298

ブレイクとミウムは、一目を避けながらある場所を目指していた。


ルーツーがバイオニクス共和国のコンピューターにアクセスしたことで、街にある監視カメラの位置はすべて把握し、今のところ監視員バックミンスターにも、襲ってきた傭兵プライダルを雇った者からも見つからずに済んでいる。


二人の目的地はラムブリオン·グレイの住んでいるところだ。


ミウムは生物がいなくなった未来世界を変えるために、この時代へとやって来た。


そのためには、バイオニクス共和国を動かしている人間を殺さなければならず、そのターゲットの中にブレイクがよく知るラムブリオンの名があった。


ラムブリオンは共和国の上層部の一人であり、この国を造るのに多大な貢献をした者だった。


そして、何よりもブレイクと彼の妹クリーンを共和国へ連れてきた張本人でもある。


《なあベルサウンド。つまんねぇことを訊くが、そのラムブリオンってのはお前の後見人なんだろ? いいのかよ殺しちまって?》


ルーツーが何気なく訊ねた。


それはブレイクが何故ラムブリオンの居場所を知っているかを話したからだった。


自分とラムブリオンの関係を詳しく伝えたことで、ルーツーは不安になったのだろう。


だが、ブレイクが何か言う前にミウムは黒羊を止める。


「訊くなルーツー。心配はいらない。私はこいつと繋がっているんだ。何を考えているかはわかる」


ミウムがいう繋がっているとは、Personal link(パーソナルリンク)通称P-LINKというマシーナリーウイルスの適合者や奇跡人スーパーナチュラルなどの特殊能力者同士の意思の疎通を可能かのうする力のことだ。


二人はP-LINKよって繋がっているため、お互いの考えていることが伝わる。


――のはずなのだが、ブレイクにはミウムの考えはわからなかった。


そのことを彼が訊ねると、代わりにルーツーが答える。


《話したと思うがミウムは特別なんだよ。P-LINKの力が他の能力者たちよりも強いから、思念を読み取れないようにガードできるんだ》


「なんかズルくねぇか、それ。他人の頭の中をのぞいておいて自分は見せねぇなんてよ」


《だよなぁ~。でも、未来のことを知るのはあまりよくねぇからさ。俺がガードするように言ったのさ》


ブレイクは勝手だなと思いながらも、ミウムが見せた未来の光景が嘘ではないことを理解していた。


P-LINKで繋がった者同士――テレパシーで相手を騙すことはできない。


それは、説明される前からでも何故かわかっていたことだった。


だが、理解はできるが対等ではない。


知らないほうが良いことがあるのもわかるが、ブレイクはに落ちなかった。


「悪いとは思っている。勝手に心の中に入っておぞましいものを見せつけたのだからな。それでも、世界を救うためにはお前の力が必要なんだ」


「ケッ、わかってんよ」


ミウムの心を読まれたと思ったブレイクはまた気分を害したが、そうも言っていられないと頭を切り替える。


そして、遠回りをしながらもラムブリオンの住む屋敷へと到着した。

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