#274

銃剣タイプの電磁波放出装置――インストガンを構えたジャズは、ベットに叩きつけられたミックスを守ろうとブライダルの前に立った。


ジャズを目の前にしたブライダルは、不可解な顔をして首をかしげている。


「う~ん、ここでヒロインが出てきちゃうのはおかしいんじゃないの? お姉さんがそこそこ強いのは知ってるけど。守れられるはずの女の子がヒーローのピンチに出てきちゃマズいでしょ?」


「あたしは守られるだけの女じゃないッ! 今までだってずっと戦ってきたんだ!」


「あぁ、そっかそっか。お姉さんはあれね。ちょっと前に流行った戦う女の子って奴ね。でもさ、それってもう時代遅れじゃない? ま、私も人のこと言えないし、嫌いじゃないけどね」


ブライダルは青龍刀をジャズへと向ける。


対するジャズはインストガンの先に付いたナイフを向け返した。


ニコもジャズの足にしがみつきながらも、逃げずにブライダルをにらみつけている。


その小さな瞳は、怯えながらもミックスにもジャズにも手を出すなと言ってるようだった。


ブライダルはそんなことを気にせずに言葉を続ける。


「そうだよ、私の大好きなアン·テネシーグレッチだって戦う女の子だったしね。よく見るとお姉さんって、ちょっとあの人っぽいね。着ている帝国の軍服のせいかな? でも残念、マシーナリーウイルスはお姉さんを選ばなかった。アン·テネシーグレッチ、ローズ·テネシーグレッチと適合者はみんな女の子だったけど、お姉さんはあの人たちと同じ帝国の人間なのに普通の女の子だ」


「ノピア将軍も適合者だ! それにこいつ、ミックスもそうだし、適合者がみんな女ってわけじゃないッ!」


「ノピア·ラシックはウイルスを無理矢理溶け込ませてるんでしょ? たぶんそのうちガタがくるよ。そこのお兄さんはよくわかんないけど、ノピア·ラシックは絶対にヤバいね。それから話を戻すと、お姉さんはただの人間で、悲しいかな、ここで私に殺されちゃう」


「そんなこと……させるか……ッ!」


ブライダルの言葉に反応して、壊れたベットからミックスが立ち上がった。


彼は震えながらも歩き出し、ジャズとニコの隣に並ぶ。


「頑張るねぇ~お兄さん。いくらやっても私には勝てないっていうのにさ。う~ん、でもお兄さんの才能とお姉さんの技術が合わされば私に勝てるかもだけど。まさか追い詰められたからって合体できるとか言わないでしょ? まさかの展開ッ! ヒーローとヒロインの合体!? ってさ。あ、今のは別にエッチな意味じゃないからね。ま、そっち系の話も大好きだけどさ」


並ぶミックスとジャズにブライダルが飛び掛かろうしたとき、彼女の持っていたエレクトロフォンが鳴った。


ミックスたちには耳馴染みのない古いディスコミュージックが流れている。


ブライダルは青龍刀を向けながら空いているほうの手で電話に出ると、今までにない真剣な表情へと変わった。


「マジか……。あんたはそれでいいんですか?」


そして喋り方こそ変わっていないが、その声色もまたシリアスなものだった。

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