#267

それから永遠なる破滅エターナル ルーインの脱走者たちは、明日の朝にこれまで攻撃していたストリング帝国の城塞へと入ることになった。


もう夜も遅くなっていたが、脱走者たちは移動するための準備を始めていた。


それは当然のことだった。


彼らは一万人はいるのだ。


今のうちから移動しておかないと、明日の朝からではとてもじゃないが間に合わない。


ライティングら帝国兵たちも、彼らの手伝いをしている。


ミックスも移動の準備に参加しようと、傍に見えたトランスクライブとメモライズに声をかける。


「お~い、俺にも何か手伝わせてよ」


ミックスに声をかけられた二人は、気まずそうな顔をすると、気にせずに休んでいてほしいと返事をした。


しかし、自分だけ何もしてないと手持ち無沙汰ぶたさなってしまうと言い返すと、トランスクライブが何かに気が付いた。


「そういえば、あの気の強そうな女は一緒じゃないのか?」


「ジャズのこと? 彼女なら城塞に残っているよ。だってほら、プライダルだっけ? あのお喋りな子に狙われているからさ。あの子にスピリッツさんを襲うように頼んだの君らなんでしょ?」


「プライダル? 待て、オレたちはそんなことを依頼していないぞ」


「えッ!? でもプライダルって子は仕事だって……それにメッセージムービーが送られて来たんだよッ!?」


ミックスはプライダルが城塞に侵入し、総指揮官であるスピリッツが重傷を負わされ、その後にジャズへの襲撃が予告されたことを伝えた。


トランスクライブとメモライズは互いに顔を見合わせると、自分たちはそんなことをプライダルに依頼していないと言う。


彼らがプライダルを呼んだの、城塞の攻略するためにどうすればよいのかという相談がしたかったのであり、直接誰かを襲うように頼んではいない。


それは、プライダルに報酬を支払うほどの金銭を、永遠なる破滅エターナル ルーインの脱走軍が持っていなかったからだった。


「相談なら無料だって聞いたから頼んでみたんだ。まさか本当に来てくれるとは思わなかったけどな」


「そんなのどこで知ったの?」


「ネットの広告だ」


「そんな傭兵いるんだね……。現代的とでもいうのかな……」


あきれていたミックスは、トランスクライブの話を聞いてあることに気が付く。


では、今までのプライダルの行動は、すべて彼女が頼まれてもいないのにやっていたことになる。


そうなると、ここで永遠なる破滅エターナル ルーインの脱走者たちとの争いにまくが下りたとしても、プライダルの仕事はまだ継続しているということだ。


「てことは……ジャズが、ジャズが危ないッ! 」


ミックスは急いで城塞へと戻ろうとした。


そう――。


プライダルがやっていることが、トランスクライブたちからの依頼でなければ、彼女は今でもジャズのことを狙っているはずだからだ。


「おい、どうしたんだよ急に?」


「ゴメンね! こっちの手伝いができなくなっちゃった! ライティングには先に戻ってるって伝えておいてッ!」


そして、ミックスは側にあったストリング帝国の戦闘車両――プレイテックに乗り込み、ジャズが残っている城塞へと向かった

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